⑤ 平滝係長の決断


 係長は、内線電話を署長から借りると、捜査本部に電話をいれた。

「篠立主任に代わってくれ」

「はい、篠立ですが。代わりました」

「あぁ、平滝ですが、主任、組合せを頼んでいたが、少し変更をしたい。うちの班員二名と玉川東署の刑事一名の三名によるチームに組み替えておくれ」

「はぁ、うちが二名で所轄署が一名の三名で、一チームですね、鑑取、地取、証拠品の三班で行きますね」

「それでゆくと、十班出来るよね」

「はい、そうですね」

「後は、本会議室に戻って、俺が細かい指示をするからさ」

「了解しました」と電話を切った。そして振り替えると、

「奥田管理官。捜査本部に戻りましょうか」

「そうだね、いつまでも我々が本部を離れることは出来ないだろう」と二人が立ち上がった時、署長室の電話が鳴り響いた。署長が立ち上がって受話器をとって何か話していたと思っていたら、受話器を管理監官に向けて、

「奥田管理官、君に電話だ」と管理官に受話器を渡した。

『ハイ、奥田ですが』

『奥田管理官ですか。電話ですみません。私は東京地検特捜部の主任でチームリーダーをしている、小坂部おさかべと申します。署長に電話をかけたら、本庁からは奥田管理官が来ていると、伺ったもので。電話を代わって貰いました』

『それで、私にどのような話があるのでしょうか?』

『実は、今そちらで起こった殺人事件に関しまして、ご配慮を賜りたくて電話をいたしました』

『配慮? 配慮とは一体どんなことでしょうか?』

『電話で理由をお話しするのも失礼かと思いますので、早急に一度直接お目にかかってご相談したいと思うのですが』

『私が、東京地検に出向いていけばよろしいのですか』

『誠にご足労ですが、そうしていただくとありがたいのですが』

『成る程、早急に被害者でもある佐伯泰三さんの会社に、事情聴取に行かなくてはなりませんので、そのあと検察に寄ると言うことで宜しいですか』

『解りました、そのあとで結構です』

『勿論、その時は係長の平滝警部も一緒と言うことで宜しいですね』

『ハイ、解りました。そうですか、平滝係長が担当係長ですか。それは心強い。彼の噂は検察庁にも届いていますよ』

『それでは、そう言うことで後程伺いましょう』

『宜しくお願いします。それでは後程』と電話が切れた。

「平滝君、検察庁の特捜部から電話だ、早急に会うことになったので」

「特捜部ですか? また、何ででしょう?」

「兎に角、捜査本部に戻ろう。佐伯泰三の会社には俺と君とで事情聴取に行こう。そのあとで地検だ」

「ハイ、了解しました」と言うことで、二人は捜査本部に戻った。

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