③ 玉川東署にて


 玉川東署に着いた三人は早速、捜査本部に足を運んだ。大会議室に設置された捜査本部の前列の雛壇に、奥田管理官、玉川東署の捜査一課長、そして平滝係長が席を埋めた。

「あれっ、署長は?」

「一寸、平滝係長、後で話があるので、その件については後ほど」と管理官が囁いた。

「それでは、今から第一回目の捜査会議を行います。それでは概況を西川原係長から発表願います」

 「世田谷区用賀一丁目で、昨夜十時頃○✕産業の経理部長である『佐伯泰三さえきたいぞう、五十九歳』が自宅で何者かにより銃殺されている遺体を発見しました。昨夜十時頃、佐伯さん宅から大きな爆発音のような音が響き渡ったと、近所の住民から110番連絡があり、近くの派出所から巡査が調査に飛んでいって、今回の事件が発覚しました。早速確かめた巡査より、玉川東署に連絡が入り、捜査一課強行班が現状を確認しました。本屋敷は被害者の一人住まいで、通いの家政婦を雇っていました。早速鑑識が現状を保持しましたが、被害者が至近距離から散弾銃をまともに浴びたようで現場のあまりの残虐さに驚いたわけで、駆けつけた派出所の巡査によりますと、玄関の鍵は掛かっていなくて、電気も居間は煌々と付いていたそうであります。家政婦に聞くと、家政婦は自分が帰る時間六時には全部鍵を掛けて帰ったそうです。勿論玄関もです、と言うことは犯人は被害者自身が招き入れたのではないかと考えられ、顔見知りの犯行ではないかと考えられます。そして、盗まれたものはない模様で、家政婦によると、現金も家には置いておかなかったそうで、後は被害者の家族、息子さんと、娘さんに確認してもらう予定です。二人とはもう連絡済みで明日にはこちらに来てもらう予定です。今のところ以上です」

 そして、奥田管理官は鑑識結果の報告を促した。

「鑑識係長の友田ともだです。殺人に使用された凶器ですが、今のところハッキリとした凶器の特定は出来ておりません、散弾銃を使用しており、詳しい鑑定を科捜研に依頼しているところです。ひょっとすると、手作りの可能性もあると考えております。後、下足痕げそこんに関しましては、屋敷内外からは別に怪しいものは発見できませんでした。犯人に繋がると思える媺物も有りませんでした。以上です」そこで警視庁鑑識課の作田係長が、言葉を繋いだ。

「後、指紋についてですが、被害者や家政婦さんの指紋ばかりで、ただし、二、三件の不明な指紋が発見されました。前科者リストには該当するものは有りませんでした。以上です」

 次に、聞き込みから発言は?

「玉川東署の一課で巡査部長主任をしております片西かたにしと、言います。被害者の自宅周辺を聞き込みに当たりましたが、十時に爆発音のような音を聴いたと言うお宅ばかりで、怪しい人物の目撃者はおりませんでした。又怪しい車などの目撃者もいませんでした。ただけたたましい音のエンジン音を聴いたと言う情報だけで、犯人はあっという間の早業で殺人をこなし、素早い行動で現場を離れたと考えられまして、これはプロの仕業かもと、考慮にいれております。以上です」

 そこで平滝係長が取り纏め、

「被害者の死亡時間は十時頃、犯人は被害者により家に招き入れられた。被害者の顔見知りの犯行が強いと言うこと。犯行現場には手掛かりになりそうなものはなかった。犯人の目撃者も無し。逃走車両はバイクが有力かと思われる。凶器は散弾銃。銃については科捜研の結果待ちと言ったところかな。以上かな?」

「今のところそんなもんだろうな」と奥田管理官が言った。

「これでは、何の手掛かりもないと言ったところか。篠立しのたて主任、各班毎に西川原係長と相談して組分けをして、今後の捜査体制を作って貰えませんか」

「了解しました!」と、二人から返事があった。

「私は一寸、奥田管理官と共に署長室に行ってきますので、それでは管理官参りましょうか」そして二人は玉川東署の署長室に向かった。

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