第4話 問い詰められる

「どういうことって、何が?」


 俺は問いかけてきたクラスメイトたちに問い返した。

 すると、クラスメイトのギャルの一人が少し興奮気味になりながら答えてくれた。


「二人が喋ってるの見たことなかったから、みんなびっくりしてるんだよ! 去年も喋ってるところを見たことないもん!」


 たしかに、他の生徒からしたら驚いてしまっても仕方がないか。なにせずっと話していなかった二人が急に話すようになっているのだから。


 それに唯は顔が整っているから校内でも人気があるはずだから、みんなが気にならないはずがない。


 俺は誤魔化して伝えようかとも思ったが、別に本当のことを話してもみんなとの接し方が変わるわけでもないので、本当のことを伝えることにした。

 でも、唯のために唯が高校からギャルになったという事だけは隠し通すことにした。


「実は俺と唯は幼馴染なんだよね」

「「「えええええええ!?!?!? そうだったの!?」」」


 やはり俺と唯が幼馴染だと知っている人は一人もいなかったみたいだ。

 だが、そうなるともう一つのことに疑問を持ち始めるはずだ。


「じゃあ、なんで去年から今まで二人で喋ったりしてなかったの?」


 ま、この疑問は持つよな。

 だけど、この疑問に対して正直に答えるわけにはいかない。正直に答えてしまうと、唯が高校からギャルになったということがバレてしまうからだ。


 個人的にはたとえ唯が高校からギャルになったということを知ってもみんな今までと変わらない対応をしてくれるとは思うのだが、唯自身が恥ずかしいだろう。


「ほかの友達と一緒にいることが多かったから喋っていなかっただけだよ。そして今回、隣の席になったからまた喋るようになったんだよね」

「なるほどね、そういうことだったんだね! でも、二人が幼馴染で仲も良さそうなのは意外だったなぁ」


 俺の答えを聞いて、みんな納得してくれたようだった。

 クラスメイトたちの反応をみた俺と唯は二人でホッとした表情になっていたと思う。



 その日は一日中大変だった。


 授業が終わり、休み時間になるたびにクラスメイトたちが色々質問してきたからだ。

 特にギャルたちは興味津々で質問攻めしてきていた。


 もちろん大変だったけど、嫌な質問は一つもされなかったから問題はない。

 ギャルたちは恋バナが大好きなようで、そういう質問ばかりされていた。


 俺はそれに対して曖昧な答えを返していただけだったと思う。

 そういう質問をされている間、唯は俺の隣で頬を赤らめながら頷いているだけだった。




 すべての授業を終え、帰る前のホームルームを行い、生徒たちはみんな帰路についた。


「それじゃ、俺たちも帰ろうか」

「う、うん!」


 唯は緊張しているようだったが、声が普段よりも少しだけ高くなっており、嬉しく思ってくれているようだったので、俺は安心した。


 もしかしたら、遊ぶ予定はなくてもギャルの友達と帰りたかったら申し訳ないことをしたと思っていたので、唯が嬉しそうにしていて良かった。


 俺と唯は昨日と同じように一緒に帰路についた。


「今日は一日中、質問攻めにあったね」

「そうだね、そのせいでいつもより少し疲れたかも。海斗くんは疲れてない?」

「いつもよりは疲れているけど全然平気だよ。特に唯の友達から質問攻めされたけど、みんな優しいから変な質問とかされなかったし大丈夫」

「ふーん、海斗くんはああいう子がタイプなんだね」


 あ、明らかに拗ねている。

 こういう拗ねているところも可愛いんだよな。


「みんな優しいけど、別にタイプとかっていう訳ではないよ」

「じゃ、どんな子がタイプなの?」

「うーん、元々清楚だけど、幼馴染の好きなキャラクターを聞いてそれに合わせてギャルになっちゃう子かな」

「……っ!?」


 俺は少し唯をからかってみた。

 すると、唯の顔はどんどん赤くなっていき、今にも顔から蒸気を発しそうだ。

 さすがにからかい過ぎたかな。


「唯、大丈夫か?」

「もうっ、海斗くんからかい過ぎだよ!」

「ごめんごめん」


 俺と唯は昨日と同じく楽しく喋りながら歩いていた。


「お、そろそろ着くね」

「あ、う、うん……」


 どうしたのだろう。

 唯が急に俯きながらもじもじし始めた。きっと何か言いたいことがあるけど、恥ずかしくて言えないといった感じだろうか。


 今回は俺から聞いたほうが良さそうだな。


「唯、どうしたの? 何か聞きたいこととかあった?」

「うん、あの、その……」


 唯は何度も何度も深呼吸をする。

 そこまで勇気を必要とする要件なのだろうか。


 俺は唯が話し始めるのを待った。


 唯は小声でよし、と呟くとまだ緊張の残った顔ではあるが、何かを決心したような表情をしていた。


 俺は改めて聞く。


「唯、どうしたの?」

「あのね、今日、海斗くんの家に行ってもいいかな?」

「え、あ、お、俺の家!?」

「うん!」

「うん、まあ、いいよ」

「やった! ありがとう!」


 まさか俺の家に行きたいと言うとは思っていなかったので俺はあたふたしてしまっていたと思う。

 中学生の頃までは、家に遊びに来るなんて日常的なことだったが、高校になってからはそういうことをしてこなかったので少し、いやかなり緊張している。


 承諾してしまい、もう引き返せないので俺は自分の住んでいる部屋へ唯を案内することにした。

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