第14話 器の力

「どうやら貴方の策はうまくいったようですね」


「やはり気がついていたか。?」


 しんと静まり返ったパーティー会場で、俺とクラウディアはそう話す。


 先程まで喧騒に包まれていたパーティー会場は今では誰も彼もが話すことをやめて、ただボーッと天井を眺めていた。


「私を使って煽り出した辺りから。なにか不自然と思いまして」


「いい勘だ……いや、その瞳が写したのか? ならば聞いてやる。お前、何をみた?」


 クラウディアが持つ瞳のことは知っている。魔力を宿すが故に、魔力を見通すことができる瞳。


「パーティー会場全体を覆う魔力。

 気が付きませんでした。今の今まで。貴方が神の器であるということを」


『あれで見えるなんて中々いい眼を持っているわね。まさか、私の魔法を多少見破るなんてね。面白い人間もいたものだわ』


 闇神がクラウディアの言葉を聞いて、俺の中でくつくつと笑う。


 どうやら俺が魔法を使うまでクラウディアは俺が器であることを見抜けなかったようだ。原作同様魔眼に至ってる瞳ならば見抜けるのだろうか……?


「俺が神の器だとして……俺の使った魔法の理論はわかるか?」


「……神の力を使った大規模魔法。何かしらの条件をトリガーにして発動するものと考えてよろしいでしょうか?」


 クラウディアが頬に一筋の汗を流しながらそう口にする。


 彼女では何が起きたのか完全には理解していないようだ。いいぞ、魔力を見通す眼で闇神の魔力や魔法を完全に見抜けないなら、この力はかなり有用だ。


 新しい力の性能テストも終わったことだし、答え合わせをしてやろう。


「俺が使った魔法は【現と運命の逆転】。闇神の器である俺だけが使える魔法だ」


「……聞いたことがない魔法ですわ。本当にそれは」


 言葉にはしなかったが、クラウディアはその魔法の存在を疑っていた。


 クラウディアは公爵令嬢という立場とその才能ゆえに比類なき魔法の知識を有する。原作でもクラウディアはほぼ全ての魔法が使える魔法特化の性能をしていたくらいだ。


 そんなクラウディアが知らない魔法はほんの一部。例えば神の器にならないと使えないような魔法とか……。


「対象に一定時間内に特定の言葉を口にさせることで発動する魔法。その言葉を発した数が多ければ多いほど、魔法としての力は強まる。

 第三王子は実に扱いやすかった。なにせ、簡単に俺の言って欲しい言葉を大量に言ってくれたのだからな」


 正直笑いを堪えるのが大変だったくらいだ。こんなにも上手くいっていいのかと思うくらい。


 クラウディアは俺の言葉を聞いてハッとする。どうやら何か気がついたようだ。


「狙っていた言葉は不敬。不敬をトリガーにして発動する魔法……!!」


「流石に気がついたか。第三王子がああも不敬と口にしてくれたからな。俺の想像以上に魔法が強まった」


 現と運命の逆転は原作でも出る魔法の一種だ。原作なら攻撃判定や回避判定などを自分の有利な結果に捻じ曲げるというもの。


 これをゲームではなく、この世界で使うと。この魔法の性能はこうなる。


 。これがこの魔法の真の性能だ。


 無論、好き勝手に現実を捻じ曲げることはできない。先程言った通り、この魔法は特定の言葉を口に出させれば出させるほど、その効果を強めていく。


 最大まで効果が強まると今みたいに現実を捻じ曲げた上で、人々を一瞬で隷属させることができる。今、会場の人達がボーッと天井を眺めているのは、俺の隷属化にあり、なんの命令も受けていないから。


 つまり指示待ちの状態だ。


「隷属化までいくとは思ってもいなかったがな。だがこれはもっと面白いものが見れる予感がするぞキヒヒヒ」


『この魔法を人に向けて使うとこうなるのね。それで? お前様は一体こいつらをどう使うのかしら?』


 闇神が興味ありげな声でそう口にした。正味隷属化するまでのことは考えていなかったから、こいつらをどう使うかは完全にアドリブだ。


 けれど権力がある自由に使える駒が増えたというのはこれはこれで……。


「やはり感心いたしました。まさかここまでの魔法行使を軽々しくやってのけるなんて……私の目に狂いはありませんでしたわ。貴方と一緒なら必ずやこの貴族達を一掃できると確信しました」


「期待に応えられたようで何よりだ。ならばもっと面白いものを見せてやろう。

 この国は上が腐っていると言ったのを覚えているか?」


「ええ……それが一体どんな……いや、まさか」


 クラウディアが俺の視線が向く先を見て何かに気がつく。


 俺の視線は今ボーッと天井を眺めている第三王子を向いている。俺はクラウディアの方を見てこう口にする。


「キヒヒヒ……この国の腐敗はもっと深刻であると直に見せてやろう」


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