第30話 当たり前


 翌日。リビングでスマホをいじりつつ、ぼんやりテレビを見てたけど、私は昨日のことを思い返すだけで、一人で「へへ…」とニヤニヤしてしまう


 颯馬くんは今日、お父さんが久々のお休みだそうで、せっかくなので二人でのんびり過ごして、外食でもするという話だった


 私も特に予定はないから、もう少ししたら課題でもやろうと思っていた。すると、


「お姉ちゃん?」

「はい!?」


 不意に後ろから話しかけられ、顔が緩んでるところを見られていないかと焦りつつ、振り返る


「昨日はどこまでいったの?」

「え?」

「如月さんと一緒だったんでしょ?」

「え…」


 な、なんでバレてるの…


「昨日、送ってくれてたの見えたし」


 な、なるほどね…


「うん…」

「ねえ、どこまでいったの?」

「…昨日はカラオケ屋さんに行って、ごはん食べて、後はカフェでお喋りしてたよ」

「ああ…そういう意味のじゃないんだけどね…」

「ん?」

「うん。もう分かったからいいや」

「え?何なのよ」

「うん、いいからいいから」


 少し呆れたふうに見てくるけど、何よ。

 どういう意味だっていうのよ


「お姉ちゃん、明日も出かけるんだよね?」

「え?う、うん…」

「誰と遊ぶの?」

「と、友達よ…!」

「へ~…」

「だからなんなのよ!」

「分かりやすいなぁ、って思って」


「ふふん」と、ドヤ顔で言ってくる妹がかなりウザい


「…ちょっとあんたねぇ…」

「ねえ、お姉ちゃん」

「何よ…」

「如月さんって、モテるの?」

「急に何を…」

「一昨日ね、ショッピングモールで可愛い女の子と歩いてるの見たから」


 一昨日…たぶん二宮と一緒だった時だ


「あとね、その前の日はファミレスで別の可愛い女の子と一緒だったよ?」


 …それは一之瀬さんね…


「ねえ、どうしてそんなモテてるの?」


 そんなの、私の方が教えて欲しいわよ


「知らないわよ…」

「ねえ、お姉ちゃんはあの人でいいの?」

「どういう意味?」

「いや、お姉ちゃんなら如月さんじゃなくても、もっとイケメンと付き合えるでしょ」

「………」

「ねえ、他の人じゃ駄目なの?」

「それは…」

「いい人なのかもしれないけど、大人しそうで地味だよね。それなのにお姉ちゃん達みたいな女の子を、毎日取っかえ引っ変えしてるんだよ?どうなってるの?」

「だから知らないってば!!」


 …そんなの、この子に言われなくたって、私だって分かってる。他にもっとイケメンで性格のいい男子とか、たくさんいると思う


 でも、それでも私は颯馬くんがいいの…



 私が沙織のことを睨むと、さっきまでの挑発的な感じがなくなり、いつものふわっとした雰囲気になった


「ごめんね、よく分かったよ」

「だから何がよ…」

「お姉ちゃん、本当に好きなんでしょ?」

「それは…」

「う~ん…なんていうか、もし如月さんがやたらモテて、女の子と遊ぶのだけが目的みたいな男なら、絶対反対しようって思って」

「そんな人じゃないわよ!」

「うん。だから聞いたでしょ?どこまでいったの?って」


 あれは…そういう意味だったんだ…


「私も一度しか会ったことないけど、そんな人じゃないって思ってるよ。でも、ここ何日かで三人の女の子と一緒だったでしょ?それでちょっと心配になって」

「そ、そうだったんだ…」

「だって、お姉ちゃん初めてでしょ?」

「何がよ」

「たぶん、男の子のこと好きなったの、初めてでしょ?」

「そんなことないし!!」

「ふふ。じゃあそれでいいよ」


 何よ…分かったふうなこと言って…

 まあ、実際そうなんだけど…


「もう話は終わりでいいわね?」

「うん」

「私、課題やってくるから」


 そう言って私が自室に行こうとすると、


「お姉ちゃん」

「何よ」

「頑張って」


 ニコニコと笑顔でそういう沙織は、私のことをからかってるふうではなくて、本当にそう思って言ってくれてるのだと分かる


「う、うん…」

「あ、課題のことだよ?」

「わ、分かってるってば!!」


 素直じゃないんだから!もう!!



 はあ…


 でも、姉妹だから似てて当たり前か…




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