第21話 デートだよね?


「そ、それで?どうしたいの…?」

「どうしたい、って言われても…」


 困ったような表情で、少し落ち着かない感じの如月が可愛くて仕方がない


 なんだかいけない扉を開けてしまいそう…

 でも先走りはダメ、絶対


「そ、そういえば!」

「うん」

「えっと、如月くんの趣味は?」

「趣味…趣味かぁ…」


 うん。普通にこういうところから押さえていかないと


 でも、たぶん読書だよね?

 いつも本読んでるし


「特には…」

「読書じゃないの?」

「学校で一人でいるとやることないから読んでるだけで、好きと言えば好きだけど」

「じゃ、じゃあ、一人でなくなれば…もうそんなに本読まなくなるの?」

「どうだろう。話す相手がいれば話すと思うよ。でも、緊張して…」


 ああ…それで今までずっとぼっちなんだ


「その…だいぶ私には慣れたよね?」

「うん。三条さん、こんな俺にもよく話しかけてくれるし、いつもありがとう」


 少し恥ずかしそうに笑った如月に、私は撃ち抜かれそうになる。いや、もう既に撃ち抜かれた後なのかもしれない。

 だって、胸がキューン…ってなってるもん


「うん…」

「えっと…三条さんはいつも友達とどういう所に行ってるの?」

「だいたいはショッピングかな」


 女の子達と出かける時は、洋服を見たり雑貨屋さん回ったり、化粧品なんかも見るんだけど、そういうのは男の子はあんまり興味ないよね


「ショッピングって、服とか化粧品とか?」

「まあ、そんな感じかな」

「そっか。三条さん綺麗だもんね」

「なっ…」


 不意打ちが過ぎるよ!!

 当の言った本人は「え?俺、なんか変なこと言った?」みたいな顔してるけど、普通そんなことサラッと言えないわよ!!


「そ、そそ、それで…きしゃらぎくん…」

「え?」


 さすがの私も動揺を隠し切れない。

 噛むのとか恥ずかし過ぎるでしょ!

 もう…やだ…


「き、如月くん!」

「は、はい…」

「えっと…カラオケ…とかは…?」


 大勢で、男子も一緒に遊びに行くってなると、その辺が無難かと思ってそう言ったんだけど、言った後で気付いた


(ふ、二人っきりでカラオケなんて…)


 密室で如月と二人っきり…

 もちろん隣に座るよね?

 えっと…どれくらいの距離?

 くっつきたいけど、でも恥ずかしい…

 じゃあ、ちょっとだけ間空ける?

 それで何かの拍子で肩が触れ合ったりして、お互い「あ…」ってなって、見つめ合ったりしちゃうの?

 キャー!照れる!!


「三条さん?」

「は、はい!!」

「顔赤いけど大丈夫?」

「だ、大丈夫!」


 くっ…なんでいつもこうなるのよ…


「俺…カラオケとか行ったことないんだけど、平気かなあ…」


 え?まさか乗り気なの?本当に?


「へ、平気だと思うヨ!」

「ん?う、うん…」


 こうなると、さっきの妄想が一気に現実味を帯びてきた。

 いや、もちろんそんなことになるなんて思ってないよ?でも、ちょっとくらいはいい雰囲気というか、私のことも意識してくれるかなあ、って思って期待しちゃう


 だって、付き合ってもいない男女で、二人っきりでカラオケって行く?

 そういう人もいるとは思うけど、私の中では限りなくグレーゾーンだ


 いや、何がグレーゾーンなのか分かんないけど、ちょっと色々あり過ぎて、頭が追いついていないのかもしれない


「それじゃあ…カラオケでいい?」

「うん。教えて貰えると嬉しい」

「うん…」

「あと、やっぱりちょっと本屋さんも行ってみたいけど、いい?」


 あ、やっぱり本好きなんじゃない


「うん。いいよ」

「三条さん、本読むの好きだって言ってたよね?どういうの読んでるのかなって思って」


 あ…この人、覚えてるんだ…

 ヤバい…雑誌くらいしか見てないよ…


「うん…」


 帰ったら沙織に聞いてみよう。あの子、恋愛小説みたいなの好きだったし


「それじゃあ、あとはまたその時に話して、何処行くのとか決めようか」

「うん、分かった」

「うん…」

「三条さん、ありがとう」

「うん…私の方こそ…」




 これ…たぶん如月は気付いてないんだろうけど、デートだよね?





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