幕間(1)

「――ということがあったのよね」

「おいおい……」


 銀次郎は分厚い手で目元を覆い何度もかぶりを振ってみせた。


 シーノの口から語られるのはせいぜいほんのちょっぴりのアクシデントだろうとたかくくっていたのだが、よもや危うく死にかけたのだ、などと聞かされるとは思ってもみなかったのである。


「お前さんな……あれ程言ったじゃねえか! 危ねえ真似はするんじゃねえぞ、って!」

「ま、待って! 待ってってば!」


 この!と腹立ちまぎれに振り上げられた銀次郎の拳に、シーノは思わず首をすくめて両手を突き出しさえぎった。


「そ、そんなに怒らないでよ、ギンジロー! 何もあたしだって好きでやったんじゃあないんだからっ!」


 確かにシーノの言うとおりである。

 渋々銀次郎は小刻みに震える拳をゆっくりと下ろした。


「それよりも、もう一つのことの方がはるかに重要だと思わないの?」


 至って真面目な表情を崩さずに、シーノは残る二人の顔をじっと見つめて言った。


「……ね? ゴードンさんにスミル。あんたたちもギンジローの『こーひー』、飲んだのよね? 何か変わったことがあったんじゃないの?」




 問われた二人は無言で互いを見つめる。

 やがて口を開いたのはスミルだった。




「実は……それなんです。僕がここに来たのは」


 今度はスミルが語る番だ。



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