CASE FINAL.上位存在

エピローグ 実利の怪物

『君の優勝。それこそが、運命だったのだろう。優勝した君は世界大会に進むか、棄権きけんするかを選ぶことができる。……返事がなく意識もない。まさか、優勝した君が死んでしまわれることになってしまったとは。これもまた運命だったのだろうか。あの世界では寿命を延ばすことが出来たとしても、。君はあの世界で常に寿命をすり減らしていった。故に、優勝した瞬間、延命をしていた君は命を落としてしまったのだ。さて、どうするべきか。確か別の参加者がある約束をしたと聞いた。この死体は持っていくのが最適解と思考する――』


『あーあ、みんな死んでしまいましたねー』


『ああ、なんと運命は残酷で悲劇なのだろうか!!』


『GAME OVER』


汝等なんじらよ、口をつつしむがいい。まだ生を残した人物がいるではないか』


『発明家の彼は、脳だけの状態で生き延びています。彼は、優勝者の情報も繋がれることになりました。これにより、私達の今回の実験記録は全て保存されました』


『しかしこれじゃあ、生きているなんてとても言えませんねぇ~』


『優勝者の死亡は想定外メジ。これからどうするメジ?』


『もし、参加者が生きていたならば、我々は事務的に手続きを済まし、次の大会を始めていたのだろう。しかし、このような想定外により、我々は次の参加者がどう動くかなどという予想を付けなければならなくなってしまった。しかし、物事には必ず想定外が存在する。我々の中には想定外という概念がいねん自体を想定することができない存在もいるだろう』


『ERROR!!ERROR!!』


『その言葉には、お答えすることができません』


『次の大会、また次の大会も優勝者が死亡してしまったのなら、もしくはそれにじゅんずる想定外が起こってしまったのなら、我々は最も素晴らしい思考を持つ人物など、見つけることが出来なくなってしまうだろう。そこでこのことは一旦置いておき、別のことを考えることにしよう。もし、我々がこのような大会を開いていなかったのならば、素晴らしい思考を持つ彼ら参加者達は、どうなっていたのだろうか?』


『私の見立てだと、あの小説家さんなら、後にノーベル文学賞を受賞してましたねー』


『発明家の彼は、「走馬灯復元機」を完成させずとも、「思考投影機」という互換ごかん機は完成させていたでしょう』


『あの素晴らしき中学生の妄想なれば、その「思考投影機」なるものにより、時代を未来へと進めていたと我は確信する』


『あのテロリストはもうすぐ死刑だったんですけどねぇ~。できるなら私の実験材料に欲しかったですねぇ~』


『あの子は後に来る戦争を予言していたメジ。でも、止めること自体は出来ないと考えてたメジ。それでも、生きてたら規模を更に抑えることが出来たメジ』


『ああ、なんということだろう。彼ならば、かの人心掌握術じんしんしょうあくじゅつにより、交渉を優位に進め、戦争の救世主になっていたであろうに』


『CONTINUE?YES.ミッション:この戦争を戦い抜け』


『君が見つけたゲーマーならば、いずれ必ず起こるあの世界の戦争に対し、我々ですら思いつかない戦術を披露ひろうして、素早く終結まで導いてくれていたのだろう。このように、我々が争わせ続けていた存在は、あの世界にいて、莫大ばくだいな利益をもたらすだったのだ。今の我々の問答がそれを物語っているだろう。この実験でこれ以上の想定外が起き、そんな実利の怪物を失わせるわけにはいかなくなってしまった。この思考能力実験は永久凍結とする』 


――完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

思考能力実験 ~イメージバトルロワイアル~ 火炎焔 @kaenhomura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ