ラプラスの天使④

私は、色々な人々から予言者と呼ばれている。

私の悲観的直感による予見。

そこから発せられる予言が、数々の事件や災害から救ってきたからだ。

しかし、私の予見はそこまで万能なものではない。


あの時もそうだった。

私がテロリストの皇居襲撃を予言し、今まで捕まってこなかった凶悪なテロリストを捕まえた歴史的な日。

まさしくその時の出来事自体が、私の予見が万能なものではないことを、逆説的に物語ってしまっていた。


だってそうでしょう。

私は、そのテロリストが皇居を襲撃するその日まで、今までの事件に対しまともな予言をせず、野放しにしていたのだから。

私が全て予見できていたのならば、そもそもあのテロリストによるテロなんて一回も起きなかったのだから。


私は常に最悪の未来を想像している。

そのせいで、に対する認識が少し甘くなり、予見することができない。


おそらく、今回もそういうことなのであろう。

このゲームの参加者であるテロリストが起こす大事件、それを私は無意識に、であると見過ごしてしまっている。


だけど、テロリストが大事件を起こすという予見はたてられた。

それは私にもできること、変えられることがあるということ。


私の使命は、私達の現実世界を救うこと。

その為に果たす私の目的は、ある一人の参加者を優勝まで持っていくこと。

すなわち、


最悪の未来は、その参加者がこの世界で死んでしまうことだけ。

その参加者が、例えどんな参加者で、今どこに隠れていたとしても、私なら探しだせるはずだ。

私は、直感を使いその参加者を探し出していく。


見つけた。

参加者と思われる老人が、家の中でずっと寝静まっている。

参加者はこのゲームで意識を失うことが出来ないから、彼は、ずっと何かしらの考え事をしていたり、戦略をたててたりしているのだろうか。


とりあえず、危険そうな状況になったら彼を守る。

それだけで、私の使命をまっとうすることができるだろう。


そんな私が次に考えるべきことは、既に予見ができているテロリストの事件をどれだけ防げるかだ。


現実世界で起きた事件である、テロリストによる皇居の襲撃。

あれを止めなければ世界的な大事件へと発展していた。

私でも止められない世界的テロへと。

皇居の事件は世界を守るターニングポイントになっていた。


ならばこのゲームでも、ターニングポイントになりそうな事件を抑え、防げないことが確定している大事件を少しでも和らげていけば世界を守れるはず。

大丈夫、大きめの襲撃なら、私はすぐ場所を勘づくことができる。


まだ脱落者は一人も出てなくてゲームは始まったばかりだ。

その時点でテロリストの事件に気づけたということは、とても重要になってくるだろう。


『参加者が一人死亡しました。残り参加者は七人です』


このアナウンスが鳴ったということは、テロリストの大規模襲撃が増え始める頃合いだ。

私は、自分の悲観的直感を信じながら、テロリストの襲撃地に千里眼で待機。

その場所にテロリストが現れ、私はそこにマジカルビームを放つ。


マジカルビーム。

簡単に言うと高エネルギーのレーザービーム装置。

人の反応が察知された瞬間に、それを放つ状態にしておいた。

これで、大規模な襲撃自体は抑えられる。


しかし、まだ私にはテロリスト本体の居場所が分かっていない。

だからこうして、一つずつ大事件になりそうな場所を潰していくしか方法が無かった。


そうやってテロリストを潰していったら、大規模な襲撃の予見が減ってきたように感じた。

テロリストの彼も学んできたのだろう。

まだテロリストは暴れているのかもしれないけど、私は、新しい予見が来るときまで、私の守るべき参加者を守ることに集中することにした。


そしてそのまま、参加者がまた一人減った以外、目立った状況の変化も無く、ゲームは二日目に突入。

二日目、ここから様々な人物が動き出し、参加者もどんどん減っていく。


そして、例のテロリストもこの日に重大事件を引き起こしてしまう。

テロリスト自身の大量増殖、そしてそれによるこの世界の破壊を。

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