ラプラスの天使③

子供の頃、私の目に焼き付いていたのは、街よりも大きい怪物を倒して世界を救う等身大の少女。

私も彼女を見習わなくてはならない。

もうすぐ街に現れる、街よりも大きい怪獣を倒すために。



そもそもなぜ私が、この仮想世界で、わざわざ核兵器を消化させたり、大きい怪獣を倒さなければいけないのか。

それは、このゲームにおける私の目的と関係していた。


その目的とは、ある一人の参加者を優勝まで持っていくこと。

それが、現実の私達の世界を救う唯一の方法なのだから。

そして、私はその目的以外の干渉をするつもりはない。


この世界は元々が参加者同士で殺しあう為に作られた世界。

私がこの世界の秩序を守ろうとしすぎると、それは逆に私がこの世界の秩序を破壊することになるだろう。


この世界では、秩序が壊れている状態こそが秩序的なのだから。

ならば私も、自分の使命の為だけに戦おう。


「私にできることで、この世界を救う」


私は、私でもまだどこにいるのか分からないその一人の参加者を守る為に戦う。

故に、彼に危険が及びそうな攻撃を、私が食い止めなければならない。


もっとゲームが進めば、彼がどこにいるのか分かるのかもしれないけど、今の私にはまだ彼の場所が分からない。

だからまずは、広範囲に渡りそうな攻撃を私が防いでいく。

今考えるべきは、大多数を巻き込む災害になり得るであろう巨大怪獣だ。


私の予見でなんとか、怪獣の出現地点は予測できた。

なので、私は怪獣がその地点に出現する直前ギリギリに、街や人を守るバリアを張る準備をしておく。

すぐバリアを出してしまうと、勘づかれるかもしれない。

なので、できる限り引きつけながら。


勘づかれると、相手はやり方を変えてしまう。

やり方が変わると未来も変わる。

私にとっても、戦いにくくなるだろう。


怪獣が出現する時間になった。

私は怪獣の出現に対し、予定通り街にバリアを張ることができた。

しかし、あれだけ警戒していたにも関わらず、私は怪獣の近くにいた人民を守ることはできなかった。

怪獣が、その人民の中に紛れこんでいて、人間から怪獣に変身していったからだ。


私は、そのことまで予見できていた。

できなかったのは、だった。

そこまで重要ではない事柄では、私の予知は発動しない。

しかし、人民全てにバリアを張ってしまうと、まず勘づかれてしまう。

そのせいで、周りの人民に犠牲ぎせいを出してしまった。


近くに参加者がいなかったのか、今回脱落アナウンスは鳴らなかった。

もし大事な参加者があの中にいたのならば、私は助けることができたのだろうか?

それは分からない。

だけど、これ以上被害が広がらないように、私は最善を尽くす。


テレビの中の彼女は巨大な敵にどう立ち向かっていたであろうか。

彼女は、素手での戦いというものが多かった。

だけど、武器で戦うことも少なくなかったことも記憶している。


私は、怪獣の目の前に、派手な装飾を施した弓矢を出現させた。

弓は宝石が散りばめられており、矢は詳しい構造が分からないくらい、強い光がまとってあった。


「マジカルアロー!!」


私は、そう叫びながら怪獣に弓矢を放つ。

この矢は刺さった物質の内側で増殖、拡散する。

そして、もう使う必要のない弓は、早めに消滅させておいた。


矢の発射と同時にマジカルカッターも怪獣に向けて投げ込んでいた。

これも強い光を放っており、はたから見るとアニメチックな光輪にしか見えなくなっている。

実際は、切れ味を出来るだけ鋭くした丸ノコだ。


それら以外も、私は色々な武器を出現させて、あの怪獣を消滅させた。

これらの武器は、私の趣味でファンシーな外見になってはいるが、どれもちゃんと本格的な武器であった。


私は以前、発明家の元へ向かった際に、色々な知識を貰っていた。

そのおかげで、あの怪獣すらも倒すことができた。

あの発明家は、どれだけ人が良かったのだろうか。


それからも私は、発明家に貰った知識と私の予見で、数々の人為的な災害や、多大な被害をもたらすであろう攻撃を止めていった。

そんな攻撃を行っていた参加者も観念したのか、私が攻撃を止めつづけることで、大規模な攻撃はパッタリと止まっていった。


私はその状況に一息つく。

そんな矢先だった。

私は、悲観的直感でとんでもない未来を予見してしまった。


「このゲームに参加しているテロリストが、何か大きな事件を起こし、私はそれを防げない」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る