ラプラスの天使②

このゲームが始まる前の話。

私は、悲観的直感で核戦争を予見よけんした。

私が『予言者』と呼ばれ始め、名が知れ渡って来た頃であった。


その戦争は、このまま行くと世界の崩壊がまぬがれない状況になっていた。

けど幸い、私には既に防衛策も考えることが出来ていた。


「この研究所に一般人が来るとは珍しい。もしかして君は、今世間を賑わせている『予言者』と呼ばれている人物かね?」


「世界的頭脳を持つ発明家さん。私はあなたにお願いがあって来ました」


「その呼び方はやめてほしいものだ。世界的頭脳というのは周りの人間の過大評価なのだから。丁度、君が『予言者』と呼ばれているように」


「でも、あなたの頭脳にしか頼めないことなんです。『核兵器を消化させる装置』を作れる可能性のあるあなたにしか」


?『破壊』や『事前停止』ではなく『消化』と」


「はい、破壊すると二次被害が出てきます。事前停止は抜け道を見つけられた時に危険。なので、撃たれること前提でそれを消化させるのが一番安全に処理できる。私はそう考えました」


「なるほど。私の研究によって、莫大ばくだいなエネルギーを吸収する方法は既に完成されている。君はそれに加え、の完成を望んでいるというわけか」


「話が早くて助かります。なので、既にエネルギーの吸収に関して、多大な実績を積んだあなたの元に来たわけです」


「君がここに来てくれたのは喜ばしいことだ。『思考はどんな発明よりも至高の宝物』だ。分かった、私に素晴らしい思考を見せてくれた君の為に、私は最善を尽くそう」


その後彼は、本当に『核兵器を消化させる装置』を完成させてしまった。

その発明品は、世界中に知れ渡り、核兵器の所有が無意味なものと成り果てていった。


核兵器の根絶、それは発明家の彼の功績が強く、彼にノーベル平和賞が送られることとなった。

あの発明家が私のことも話したのであろうか、ノーベル平和賞受賞の権利は私にも、もたらされることになった。


しかし、発明は全て彼がやったこと。

「私にできることで、この世界を救う」の信念で、私は私のできることをした。

私はその受賞を丁重に辞退させてもらった。


そしてこのゲームで私は今、その核兵器が降ってくる未来を予見した。

『核兵器の消化』の技術は、世界中に知れ渡ってしまっている。

だけど、その詳細を知るのは発明家の彼と、各国要人、そして私くらいのものだろう。


故に、参加者がなんでもありのこのゲームで、真っ先に核兵器を撃ってくるのは、とても論理的な考えだろう。

しかし私は、その核兵器を無力化させる方法を知っている。


「消化して!カクウちゃん!!」


「かーくーうー!」


出現した核兵器を食べてもらう為に、核兵器の真後ろに私の考えたマスコット『カクウちゃん』を出現させた。

このキャラクターは、『核兵器を消化させる装置』が完成し、核廃絶を広める為に私が作ったマスコットだ。


核を食うで『カクウちゃん』。

架空ちゃんとも捉えられ、丁度『想像で創造する』このゲームにうってつけのマスコットであった。


元々このマスコットには、基本設定として、核兵器を消化する胃袋が付いている。

それに加えて、カクウちゃんの細胞一つ一つが、放射線を止められるように出来ていた。


あくまでこれは創作上の設定だけど、この世界ならば、具体的なイメージさえあれば出現させることができる。

私は発明家の彼の横で、核兵器消化の仕組みをずっと見ていたのだから。


『カクウちゃん』による消化が完了し、私は『カクウちゃん』を消滅させる。

しかし、これだけではまだ終わらない。

一回の消滅だけではなく、撃っても無駄だと思わせるまでが核兵器の根絶なのだから。


次の核出現の位置を予見しながら、『カクウちゃん』をその度に出現させていく。

そして、全て同じように消化、消滅させていった。


もう核の予見が見えてこない。

撃ってきていた人物も、作戦を変えてくる頃合ころあいだろう。

この世界全体を揺るがすほどの作戦ならば、私は直感により気付くことができる。

そして、そんな私が次に予見したのは、街を覆い尽くすほど巨大な怪獣であった。

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