CASE7.予言者

ラプラスの天使①

私はしがない占い師。

そんな私のことを皆は口を揃えてこう呼んでくる、『予言者』と。

しかし、私にはその言葉を否定することはできない。

私の発した言葉が、多くの人達を救っていったのだから。


私は昔から悲観主義者だった。

私が危惧したことは全て現実となり、それが私の悲観主義を加速させていった。


ただ、そんな私にも支えとなるものがあった。

昔テレビで見ていた魔法少女。

その姿が、子供の頃ながら私の行動を決定づけた。


「私にできることで、この世界を救う」


これが、私が私自身に課した使命だった。

私は、その未来予知にも似た悲観的直感を元に、数々の世界的危機を救ってきた。


何もしなければ大多数の死者がでる大きい災害が起こる前に予防策をはり、これを止めなければ世界を揺るがす大事件になるであろう犯罪を未然に止める。

これから先、起こることが決まっている戦争にも、私はできる限りの手は加えてきた。


それによって、私はノーベル平和賞の候補にまで挙がってきたが、私はそれを丁重に辞退させてもらった。

私は私の使命を尽くしただけであり、ノーベル平和賞を受賞するべき人が、私の他にいたからだ。


私がこの世界を救えるのなら、私は命だって投げ出すだろう。

そして、私は今からまたこの世界を救うことになる。


『ボクを助けてほしいメジ』


「分かった、私をそのゲームに参加させて!」


私は、脳内に響き渡るマスコットの声に対し、食い気味に答えを出した。


『まだ何も言ってないメジ……』


私は、デスゲームの待機部屋へと転送された。


「ゲームのルールを教えて!」


『どんどん勝手に進めてくるメジね、ルールも知らないのによく参加しようと思ったメジ』


私の直感は、全ての未来を見ているわけではない。

ただ私の知り得る情報、想像できてしまう考えから、起こりうる最悪の未来を見つけてしまうだけなのだから。


だけど、そんな最悪の未来を変えるある程度の道筋までは見えている。

だから私は、このゲームの参加を表明することにした。


『君のことが少しずつ分かってきたメジ。じゃあルールを送るメジ』


私の脳内に、このゲームの詳しいルールが送られてきた。

私のやるべきことはただ一つ、このデスゲームのルール上ありえる、危険な攻撃から世界全体を守ることだ。


『後は参加者を待つだけメジ。もっとも、まだ参加が決まっていない参加者は後一人だけメジ』


これは私の為の戦いではない、世界の為の戦いだ。


『最後の参加者が決まったようなのでさっさと転送するメジ。5、4、3、2、1』


私は、仮想世界へと転送された。

私は、このゲームの開始地点がどこであろうと、現在地はたいした問題ではなかった。

ここがどこであったとしても、私はその地下でこの戦いを見守ることを決めているのだから。


まず私は、地下でも生き延びられるよう、自分に加護をつけた。

私はこれから自分を密閉させる。

私の加護は、そんな密閉空間でも生きられる環境適応をほどこすためだった。


そして深めの地下に、小型の物質を生成、拡大し、丁度私一人がすっぽり埋まるような穴を作った。

そこに私が入り、更なる自衛の準備を開始する。


私は私の周りに空いている、まだ空洞の多い場所が埋まるように、高密度の壁を生成した。

それでもまだ隙間というものは残っている。


そもそも隙間がなければ、小型の物質で拡大しながら、私という一個人の人間がすっぽり埋まるような穴なんてものは作れなかっただろう。


私は、土に残されている隙間を、まるで溶かした鉄を金型に流し込むようにして、高密度の壁で全て埋めることにした。

その範囲は、軽く見積もって半径一km。


もしこれを突破できる人物が現れたとしても、少なくとも、先に私を倒すのをためらう範囲にはなっているだろう。

ここを拠点に私は、私の直感に従って動いていく。


大丈夫、ある程度は直感で予見できているのだから。

そう私自身に言い聞かせながら。

まずはこのゲームが始まって早々に作り出される核爆発を対処していく。

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