スワンプマンズ④

俺様は、もうどれが最初の俺様かなんてもう分からねぇ。

そのくらい俺様達は増殖を繰り返したし、自由に動き続けた。

そうしている間に参加者も二人ほど減っていきやがった。


このまま俺様が自由に動き回っていれば俺様の優勝は揺るがない。

だが、そんな俺様の自由を阻害してくる奴がまだいやがる。

俺様が大きなテロ活動を起こそうとすると、確実に察知してそこに移動した俺様を消してきやがる奴だ。


幸い、大きな事件を起こそうとしなければそいつは察知しないらしく、俺様は暴れる規模を減らして行動を起こすことになった。

それで気休めに俺様は、また最初にいた刑務所、俺様の独房に戻ってきてやった。


こんなところにいても何も変わったことはないだろうがな。

そんなことを思っていたがどうやら俺様達とは違う気配、違う人影ひとかげがあるようだ。


「よう」


こいつは看守か?

看守だろうと何だろうとここにいた奴は俺様が既に破壊したはずだ。


「お前参加者か?」


これはヤマを張ったわけでも何でもねぇ。

ここにいる俺様以外の奴なんざ参加者でしかねぇからな。


「俺はもう知ってるぞ、お前もどうせ人形だろう」


「俺様は俺様だよ。あっちの独房ではりつけになってるのも俺様だし、今外で暴れているのも俺様だ」


ここで俺様は一つ嘘をついた。

俺様は俺様だし、今外で暴れているのも俺様だ。


だが、あの独房ではりつけになっているのは、俺様の人形だ。

いや、もうどっかの俺様が独房に戻ってきてまた拘束されてるのかもしれねぇな。

俺様は自由で気まぐれだからな。


「結局本体はいるんだろう?それがその独房の中だ」


「さーて、どうだろうなぁ」


最初の俺様がいる場所なんざ、俺様にも分からねぇ。

俺様が最初の俺様かもしれねぇし、どこか別の遠い所に俺様がいるのかもしれねぇ。


って会話に付き合ってる途中にこいつ瞬間移動で逃げやがった。

いや、今話した限りだと独房にでも向かったか?


「おっとまてよ」


俺様は、瞬間移動で独房に向かい、俺様の人形に向けられた攻撃を防ぐ。

独房の俺様を攻撃しようとしたこいつの思考は正しいんだろうな。

俺様は確かに、このゲーム中は独房で過ごしていようと思っていたからな。


だが、残念ながら途中でイレギュラーが起きちまったんだ。

独房この中にいると肝心の俺様が楽しめねぇことになっちまった。

だから俺様は、ここに俺様の人形一つを残して独房を去っていったんだ。

だが、そんな独房に参加者がここに来るとはおもしれぇ。


「お前面白そうだから壊し合おうぜ?」


そのまま勘違いして、人形の俺様を倒すのを頑張りやがれ。


「こっちはさっさと倒したいんだがな」


「さぁ、かかってきやがれ。俺様は人の形をしているものを壊せるなら何でもいいんだからな」


そう、俺様は人の形をしているものをたくさん壊してきた。

各地におもむき、用意されてるNPCや、参加者が作りだしたであろう人形を壊しつづけた。


あれは結局人を壊すのと何ら変わらねぇ。

壊せば壊すほど色々な顔が見れるんだからな。

と、そんな看守と戦おうとしている矢先だ。


「バーン」


そんな音と共に、この刑務所全てを破壊するほどのとんでもない爆発が起きたのは。

この看守、自ら爆発に巻き込まれやがった。


この動き方。

そうかよ、お前もただの人形かよ。

もしかして、皇居にいた警備人形隊と同じ参加者か?


そしてそのまま俺様は爆発で一回死に、別の刑務所にいた俺様に移った。

動きづらければ一旦刑務所に行く。

俺様の考えることは同じだな。


この俺様の記憶を辿ってみたが、こっちにも看守がいたのかおもしれぇ。

まだ奴はここを見ている可能性があるな、一回パフォーマンスでもしてやろう。


「看守の本体さーん」


さあ、聞いててくれよ?


「俺様は人が多く動き始める朝までは派手に動かねえ、それまでお前は俺様を殺す算段を立てておけ。お前は俺様と同じく数を増やせば勝てると思ってるんだろ?ならばお前の人形を壊し回れるのを楽しみにしておくぜ」


ああ、動かねぇ。

それは保障できる。

他の俺様は知らねぇがな。


だけど、人のあまりいない夜では俺様達は動かないだろうよ。

そして俺様は、朝に派手に動き始めてやるぜ。


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