スワンプマンズ③

俺様の目の前に俺様がいる。

ひょっとしてこいつは、どっかの参加者が作った俺様なのか?

俺様は一回、参加者の一人と戦い顔が割れている。

そいつが俺様を模倣して作ったと考えてもおかしくはない話だ。


「何でが動いてんだって聞いてんだよ。俺様は今ここに自我を移しているはずだろうが!」


目の前の俺様が語りかけてくる。

それはおかしくねーか?

俺様はたった今、自我を移して活動してた人形が死んじまったからここに戻ってきたんだ。

それなのに、目の前にいる俺様が同じことを主張してきやがる。


「何を言ってやがる?俺様は皇居でテロ活動をおこす為に身体を作ってそこに自我を移しただろ?」


俺様は混乱していた。

この目の前の俺様は銃を持っている。

つまり、使ということだ。

もしこの目の前にいる俺様が参加者だった場合、俺様は敵に素性をバラしたことになり、俺様のこの発言は完全なる悪手。


「は?俺様はそうしたつもりだったが、なぜかこの独房に居たままで、仕方ねぇから刑務所の囚人狩りを別の身体使ってしはじめたんだよ」


会話が噛み合わねぇ。

こいつ、俺様と同じ記憶を共有しているように見えて、皇居に行ってからの記憶が食い違っていやがる。


「お前は俺様だってことでいいのか?俺様がここにいるってのに、別の俺様がなぜ勝手に動いてるのかは全く分からねぇが」


「俺様こそが俺様だろうが、抜け殻の俺様がなんで勝手に動いてんだよ」


この答え方、やっぱり俺様だ。

そんなやりとりを繰り返している内に俺様は、一つの仮説を思いついた。


「聴け、目の前の俺様。これは仮説だが、もしかすると俺様の自我が強すぎて、別の身体に自我を移した後も俺様の自我が普通に残ってたんじゃねーか?」


「丁度俺様も同じことを考えてたとこだ」


「なら一回試してみねぇとな。俺様をもう一人作って、俺様が自我を移す。それでこの俺様が動いていたらそういうことだ」


俺様はまた新しい俺様を作り、そこに自我を移した。


「新しい俺様の身体、無事移動成功だ」


独房に縛られている俺様の本体が口を開く。


「俺様はまだ自我を移してねーぞ」


「決まりだな、俺様の自我が分裂している」


「じゃあどうすんだよ、結局俺様は自由に暴れられないってことじゃねぇか!」


「ならこうしようぜ。独房には自我を入れない俺様の人形だけを置いておく。今縛られている最初の俺様は、殺されないように新しく身体を作りながら、瞬間移動を駆使して自由に暴れる。誰が最初の俺様か分からないようにして、俺様だけの軍隊を作っちまうんだ」


「待て、それならまだ試してねぇことがある」


「何だ?刑務所で暴れてた俺様」


「俺様によって作られた自我のある俺様が、また新しい俺様を作って自我を移すとどうなるんだ?」


「おもしれぇ、やってみようぜ」


「・・・よし、新しい俺様に移ることができたな」


「なんでもう新しい俺様が動いてるんだ?」


「俺様が自我を新しく移した瞬間、残された自我は何事もなくそのまま残るんだよ。それで新しい俺様が勝手に動いているように感じるんだろ」


「最初の俺様はもうそのことに気付いたらしいな」


「新しい俺様、実験は成功だぜ。これでもう誰が最初の俺様なんて分かりっこない」


「よし、最後にもう一つ考えることがあるぜ新しい俺様。俺様がお前を壊す。そうするとどうなるんだろうな」


「それがあったな、俺様はいつ死んでもいいと思ってる。俺様を壊してみやがれ俺様」


「俺様が壊してやるぜ俺様。消滅したな、完全に俺様を壊したぞ」


「俺様は死んだ。それなのにまだここに俺様は生きてやがる」


「死んだ俺様の自我が、その俺様を作った俺様に吸収されたのか。死んだ俺様、記憶はどうなってやがる」


「意識してなかったが、思い起こそうとすればこの俺様の記憶も残ってやがる」


「こりゃあいい。これからは俺様の時代だ」


「これから俺様は好きなことを好き勝手やってやる」


「俺様達は時には新しい俺様を作り、時には瞬間移動をしながら自由に暴れる。ここに残りたけりゃ残ればいいし、自分が本体だと思って隠れたけりゃ隠れればいい。これから俺様は、完全な自由を手にいれる」


俺様達は、これを機に一致団結した。


「「「気に食わねぇもんは俺様が全部ぶっ壊す!!!!」」」

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