CASE5.テロリスト

スワンプマンズ①

俺様は世紀の天才テロリストだ。

俺様は近場から主要機関に至るまで、各地色々な手段で破壊活動を行い、そのほとんどを捕まることなく成功させていた。

連日報道されていた爆破テロの事件、あれの大半は俺様の仕業だ。

民衆で俺様のことを知らねぇ奴は、もうほとんどいねぇだろうよ。


なぜそこまで俺様が破壊活動を行うか。

理由は単純だ。

俺様は破壊に飢えていたからだ。

俺様を縛り付ける社会構造、思考の理解出来ない民衆、そんな奴らが住んでいる建物、この世のありとあらゆるもんが気に食わなくて仕方がなかった。


「気に食わねぇもんは俺様が全部ぶっ壊す」


これが俺様の信条だ。


そんな俺様は今、刑務所の独房にいて、明日死刑が執行される。

もっと暴れておきたかったが、もう抵抗する手段がねえ。

だが、俺様はもうこれでいい気がしている。


昔からそうだ、俺様は破滅・破壊願望が強かった。

何もかもが壊れてしまえという強い願望。

それは日本一、いや世界一と言ってもいいレベルだ。

俺様にとっては、俺様自身も気に食わねぇ。


色々な物を破壊してきた俺様が、今度は自分自身が破壊される。

そんな感覚を味わえるのなら案外死刑も悪くねぇのかもしれない。


『まだ、暴れ足りないのではないのかね?』


「誰だ!俺様がぶっ壊してやる!」


頭の中に響き渡った声に対し、俺様は塞がれた口で無理やりに声を荒げる。


『ひっひっひ、血がまだ飢えてるようですねぇ~。私はそんな君に、とっておきの世界を持ってきたというのに』


世界?何を言ってるんだこいつは?


『それは、全てが手に入る世界。ここから逃げ切る力も、嫌いな物を破壊し尽くす武器も、望めば全てが手に入る世界。そんな世界に興味はないのかい?』


こいつ、中々おもしれぇ事を口走る。

俺様が自由なら今にもこいつをぶっ壊してやりてぇが、話は聞いといてやるか。


『しかし、そんな世界にも邪魔者がまぎれこんでいましてねぇ~。君と同じように、望めば全てが手に入るなんて力を貰うものが他に七人。そいつらを殺してしまうまでは、満足に力を扱うことができずに制約を付けられているんですよねぇ~。詳しくはここに全て記されてある事柄を見て貰えれば助かりますがね』


長すぎるルールが頭の中に送られてきた。

望めば全て手に入る世界と言っていたが、こんな量のルールじゃ何も望めねぇよ。


しかし、こいつは意図的に隠してはいたが、これはデスゲームじゃねーか。

しかも、こいつは七人とは言っていたが、これは本戦じゃねぇ。

ここで勝ってもまた戦いが始まるだけだ。


いや待てよ?

このデスゲームは俺様と同じ能力を貰っている、気に食わない奴らを好きなだけ破壊することができる。

しかも、このデスゲームに勝ち続けさえすれば、俺に今話しかけてきているこの鬱陶うっとうしい奴も破壊できるかもしれねぇ。


『もちろん、君が勝てばこの私を破壊しちゃっても構いませんよ』


その言葉を聞くと、俺様の身体がちゅうに浮き始めた。


『君のその思考で、参加契約を果たしたものと見なされましたからねぇ~。もう後戻りなんてさせる気はさらさらありませんよ』


この野郎、勝手に話を進めていきやがる。


「チッ、さっさと全員壊して、てめえもぶっ壊してやる」


『その心意義はありがたいですねぇ。かさなくても、もうすぐ始まりますよ。さていつ始まりますかねぇ、はい今!』


「待ちやがれ!!」


視界が切り替わる。

こいつ、不意打ちでいきなり飛ばしやがった。

俺様は今どこにいる?誰もいねぇ山の中だ。

とりあえず、俺様はこの世界を全く知らねぇ。

奴に言われた力というものを使ってみながら、落ち着くしか方法はなさそうだな。


俺様は、千里眼と瞬間移動を使い、俺様がさっきいた場所、独房の拘束場まで戻ってきた。

結局、俺様はここが一番落ち着くんだよな。

ここが俺様のホームグラウンド、ここからが始まりだ。


参加者探しもいいが、まずは俺様がやりたいことをやっていく。

俺様の本体の身体はここに置いていく。

派手に暴れて見つかるリスクが怖いからな。


その代わり、俺様の身体を別に作り、自我を移してノーリスクで暴れてやる。

最初は俺様が捕まる前に暴れ損ねた場所、皇居に行って全てを破壊する。





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