テセウスの人形④
俺は昔からプロファイリングは得意だった。
全く別々のキャラを作り続けるTRPGの性質上、人間観察というものが大事だったからだ。
故に、その性格ならこう動くという導線は常に見えていた。
それによって、多人数を誘ったTRPGで俺がGMするときは、俺の欲しいシナリオへと他の人に気づかせないまま進ませることができた。
今回もまた新たなPCが俺の劇場へと参加した。
女に目がない楽観主義者、結末は既に決まっている。
「俺、恋人できたことないから何をすればいいか分からないや」
「え、そうなんですか?こんなにイケメンなのに。むしろ私がダメ元で告白したんですよ?恋人とはデートをするものです」
こいつは女に弱そうだからな。
グイグイ迫っておけばどんどん断れなくなっていくだろう。
「遊園地に一緒に行きたいです」
遊園地というものは、実は死角がかなり多い。
暗くなってたり、身動きが取れなくなっていたりと暗殺には都合がいい。
それに、遊園地にいると人は舞い上がって隙が大きくなる。
俺の劇場にはもってこいの場所だった。
だが、俺はそうやすやすと暗殺はしない。
こいつは何も考えてないように見せかけて、目星クリティカルを連発してくる。
どこで気づかれて防がれるかわからないからな。
さて、遊園地にしてお前の墓場に到着だ。
「ちょっと待ってて」
こいつ、また何か目星をつけやがった。
戻ってきた時にはフル装備。
こんなもの、吹っ飛ばすのは簡単だろう。
だが、やけに勘が利くこいつのことだ、見えないところでどのように固めてるか想像もつかない。
「なんですか?その格好」
「ほら、この機械が脱線して落ちるのが怖くてさ」
バレバレの嘘を付きやがる。
まあいい、俺はまだお前を殺さない。
油断しきったところで、喜劇が完成したところで、この『ヒロイン』でお前を殺してやるからだ。
その格好と妙な警戒。こいつ自身が人形を使わず、本体だということはもう明らかだ。
ジェットコースターに乗り込む。しかし俺は何もしない。
他の参加者からの横槍が入りさえしなければ、この計画は俺の想定通り進むからだ。
お前も既に俺の人形なのだ。
次にお化け屋敷。
この重装備は外さないだろう、そんなことは分かり切っている。
こいつの女慣れしていない性格は使えそうだ。
一回抱きついて警戒を減らしておこう。
こいつ、抱きつかれてすごくニヤけてやがる。
だが、体の震えが消えていないな。
警戒を完全に解くのはまだまだ先だろう。
その後も俺は何もせず、こいつの理想の彼女を演じていく。
完全に警戒が解かれるその時まで。
夜も暗くなってきて、そろそろ計画は最終段階に移行する。
殺すとしたらロマンチックな場所がいいかと思ってたらこいつ、観覧車に行くことを自ら提案してきやがった。
もう目の前の女の警戒心なんて無いも同然だろう。
既に雰囲気に酔ってやがる。
「俺と結婚しよう」
「はい、もちろん!!」
こいつ、本気で結婚する気だな。
こいつの頭を疑うが、俺の目星が今がチャンスだと輝かせている。
「キスがしたいので、目をつぶってもらえませんか?」
これでこいつは、ヘルメットを外して目をつぶる。
千里眼の線もあるだろうが、この楽観主義者はそんなことはしないだろう。
そんなことしても間に合わないくらいに終わらせるが。
「ズドン」
俺はついに、こいつの眉間を銃弾で撃ち抜いた。
念には念を入れて、こいつが
眉間を貫かれた楽観主義者が倒れていく。
『参加者が一人死亡しました。残り参加者は六人です』
目の前にいた楽観主義者が消滅した。
俺は、さっきと同じく別の参加者が同時に死んだ、というファンブルを引いてないことを祈りつつ、次の参加者候補の狙いを定める。
次の作戦を考えている間、また俺の地下部屋で地上に人形を作り続けながら。
そうだ、皇居で会ったテロリスト、その本体でも倒しにいこうか。
もうプロファイリングは済んでおり、どこにいるかの目星は付いている。
喜劇は作るものだ。
さて君にも、感動の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます