テセウスの人形③
俺が各箇所に設置した人形の一つだ。
各箇所というのは、街単位で一組ずつ順に設置していくという意味で、俺は暇さえあれば、街単位で色々な
この人形達は分かりやすい
女性がチンピラに路地裏で襲われかけている状態、というのを各箇所で作っていき、力に溺れている参加者を見つけ出す、という
さっきのテロリストを見る限り、参加者には慎重な人間が多いかもしれない。
本当にこんな罠に引っかかる人間なんているのだろうか、あるとしても相当に無計画な鼠くらいであろう。
と俺は既に自分の作戦に懐疑的になっていた。
だが、鼠は引っかかったようだ。
俺は、この罠に引っかかった奴がチンピラにつけてきた傷を回復させて、まるで参加者であるかのように振る舞う。
『自我を自分が創造した人間に移したりすることも可能である』
このルールを使いつつ俺はチンピラを操り、探りを入れる。
「この攻撃、お前もしかして参加者か?」
チンピラに反応してた相手は即座に、臨戦態勢へと突入してきやがった。
このトラップに引っかかったのもそうだが、何かこいつからは、「八人しかいない参加者と会うとは運が悪い、さっさと片付けてこの力で好き勝手してやる」とでも言わんばかりの気迫を感じる。
面白い、俺がお前の戦いを分析して、弱点を探してやるよ。
しかし、相手の手元にはハンドガンか。
乱戦ならまだしも、なんでもありのこのルールでそんなチンケな銃は、ちと心もとなすぎないか?
とりあえずチンピラの腕を刃にして、瞬間移動でこいつの首元でも狙ってみっか。
お、状況を見て瞬間移動してきたか。
まあ避けるわな、瞬間移動はみんな使えるんだ。
……待てよ、相手が撃ってきた弾丸、こっちのチンピラの方に向かってきてないか?
考えてる時間がない。
とりあえず身体全体を鉄に変えて乗り切っておくか。
そうしたら今度は散弾銃か。
瞬間移動対応の誘導弾を作り出して来たやつだ。まさか無策というわけでもあるまい。
とりあえず鉄の壁をまず作ってみるか。
あっぶねー、この壁を即貫通しやがった。
こいつ、貫通弾を持ってきやがったか。
軽く瞬間移動もしてみたが、当たり前のように誘導弾。
……熱で溶かしとくかこれ。
俺はチンピラの周りを高熱で覆い、銃弾を溶かしてわざと当たる
。誘導弾の範囲がわからないからとりあえずは当たっておいた。
さて、次はどう動く?こいつ、楽観主義者っぽい割には、論理的な一手を撃ってきやがる。
まだまだ情報を引き出しといておかないと危険だ。
今度は周りに謎の雨を降らせてきたか。
俺は、常に周囲も千里眼で見ている。
だから周りでどんな行動を起こしてもすぐわかるが、これは何の雨だ?
身体の鉄がどんどん溶けていく。
とりあえず色々な物質に変化させていくが、金属を変えてもどんどん溶けていくしよくわからない。
これを作るために成分を分析しながら、相手の方にも似たようなものを降らせてみるか。
相手の対処をよく見てみるとこれは、銀を纏わせてるのか?
ならばとりあえずこのチンピラの身体を銀に変えておくか。
謎の液体が粉へと変わっていく。
今度は何が起きる?そうか、粉塵爆発か。
俺もTRPGプレイヤーだ。
TRPGで窮地をそれで乗り越えたことだってある。
攻撃を耐えながら、できる限り反撃も起こす。
駄目だ、俺の知識量だと全部止められちまう。
楽観主義者の癖に論理的。
こいつもしかして、現実とフィクションを別々に考えるタイプの作家か?
そんなことを考えているうちに、チンピラが撃たれて消滅する。
しまった、いくら相手が楽観主義とはいえ、アナウンスが発生しなければ、このチンピラ参加者ではないとバレてしまう。
とりあえずこいつの前にホログラムでも置いておくか?とかそんな考えを巡らせていた矢先である。
『参加者が一人死亡しました。残り参加者は七人です』
偶然にダイスの女神からのクリティカルの発生!
なんという幸運だ!これでこいつは自分が参加者を倒したと勘違いする。
もうこの考えは覆らないだろう。
俺だって、さっき戦ったテロリストの消滅時にアナウンスが鳴ったら、そいつを倒しきったと勘違いするのだから。
さて、ここからどう自然に俺が作った
ん?こいつ瞬間移動して
確かに俺はこいつのことを楽観主義者とは思ってたがここまでとは。
よし、それならこれも通るだろう。
「あの、唐突なのですが、よければ私と付き合ってもらえませんか?」
半ば無理矢理だが、これさえ通ればこいつの暗殺は確定する。
「とんでもない、もちろんOKだよ」
決まっちまった。
プロファイリング通り、こいつは女に弱い楽観主義者だ。
喜劇は作るものだ。お前を俺の劇場へと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます