哲学的NPCゾンビ⓪
僕はどこにでもいる普通の中学生。
普通に登校し、普通の成績で、普通に友達と話し、普通に帰宅して、普通に就寝する。それが僕の一日だった。
こんな僕に数少ない普通ではない点を挙げるとするなら、僕は常日頃から妄想をずっと行っているという点だろう。
ただその妄想も普遍的なもので、学校にテロリストが攻めてくる妄想とかそんな普通の人と大差ない妄想だ。
この普遍的な妄想は毎日行っている。
学校にテロリストが攻めてくる妄想はゆうに千回を超えていた。
これだけの数なら流石に僕の普通ではない点として挙げていいのだろうか。
それとも、みんなやっていたりするのだろうか。
僕はそんな妄想を小説に書き込む勇気もなく、僕の頭の中だけで進んでいくストーリー。
それでも僕は常に非日常を求めているようで「学校にテロリストが攻めてこないかな」が次第に僕の口癖になっていた。
今日も朝早くに起き、登校の準備をする。
「はぁ、学校にテロリストでも攻めてこないかなぁ」
僕の普遍的な日常、その終わりを僕はいつも望んでいた。
そのとき、
『力が欲しいか?』
僕の頭の中に、まさしく普遍的ではないとしか形容出来ない声が響いた。
「欲しいとも、少なくともこの普遍的な日常が終わるなら」
『ならば汝はこのゲームへと参加せよ。ルールはいたって簡単。ある能力を使って参加者同士で殺し合うのだ』
「殺し合い?!そんなの僕じゃ絶対に勝てない。僕はなんの取り柄もないただの普通の中学生なんだから」
『汝には汝にしか持たぬ特技があるであろう。我はそれを求めている』
僕にしか持ってない特技とは一体なんなのだろうか。
僕は四六時中妄想しているだけのただの一般人だというのに。
『それだ、汝のその妄想力が必要なのだ。この戦いでは、個々の妄想だけが全てを左右する』
だけど僕の妄想は、酷く普遍的なものだ。
『汝は誰かと闘う妄想を何度行い、何度シミュレートしたと思っている?その数は、他の誰よりも多く、種類も豊富である』
確かに、妄想でテロリストと戦った回数は僕が一番多いのかもしれない。何度も何度もどうやって戦うか、シミュレートはし続けていた。
それがまさか日本一、いや世界一妄想の回数が多い人物の可能性が僕にあるなんて、妄想したこともなかった。
「そこまで言うなら、参加してみることにする」
『さて汝よ、このルールを紐解き、参加の準備をするのだ』
僕は、いつの間にか非日常的空間としか言い表しようのない空間に、ぷかぷか浮いていた。
僕は頭に叩き込まれてきたルールを読んでいく。
僕の場合、誰かに見つかった途端終わりそうなルールだった。
ならば見つからなければいいのかもしれない。
僕は一つの作戦を思いついた。
ただしこれは、僕の望んでいた非日常を捨て去るに等しい作戦だった。
『では、他に参加する人間を待つとしよう』
参加者は全部で八人。
少ないように感じた僕の直感は当たっていたのか、開始の言葉は思ったより早く宣言された。
『八人の参加者が集まったようだ。では戦いの舞台へと行くとするか。伍、
こうして僕の戦いは幕を開けた。
どこか分からない山に転送されたらしい。
僕は千里眼でまず、自分の家の玄関を認識し、そこへとワープする。
これが参加者に見られていたらもう僕の作戦は
作戦が始まる前までの僕の行動は運に頼るしかなかった。
『現実世界と同じ人間は参加者達以外存在せず、勿論参加者達の家族も存在しない』というルール通り、ここは確かに僕の家だったけど、僕の家族は一人もいなかった。
まず僕は山の汚れを落とす。
特典なのかなんなのか、僕が最初に着ていた服も、自分の身体扱いになるようだった。
さて作戦の前段階だ。
僕はこの世界の自分の戸籍を確認する。
名前が少し変わった程度で、立場はあまり変わってないようだった。
ある程度理解したら今度は、できる限りのイメージで両親を生成する。
人物の生成は、ある程度は運営側が補助してくれるらしい。
僕の程度のイメージでもなんの遜色もなく再現することができた。
前準備が整い、僕は作戦を始める。
与えられた能力は、自己に関する制約は少ない。
せいぜい人の形を保つくらいのことだ。
なので僕は、今までの自分の認識とこのゲームの記憶を全て消去して、この戸籍の人物になるように、自己認識と自分の記憶を上書きする。
これで僕も能力は使えなくなるだろう。
だが、参加者が分からなければ狙われる心配もない。
自身の完全NPC化、それが僕の作戦だ。
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