CASE3.TRPGプレイヤー
テセウスの人形①
俺は天才TRPGプレイヤー。
複数人でやるTRPG、そのゲームにおいて俺は一人で卓を回す。
そして、動画や文章でその光景を形に残す。
そのようにして俺は収入を得ていた。
俺が一人で卓を回しているその光景は、外の連中から見ると大勢のプレイヤーがTRPGをやっているようにしか見えてないであろう。
そのくらい、俺のキャラメイクは複雑であった。
そういう複数のキャラを演じるTRPGを、更に複数卓同時に行うことも一度や二度ではなかった。
俺はプレイヤーである上にGM、ゲーム制作としての才能もあった。
複数人集めて行う普通のTRPGでも、俺は才能を発揮する。
俺が用意したシナリオを、さも個人個人で選択したかのように誘導することも、俺にとってはたやすかった。
「喜劇は作るものだ」
それが俺のモットーだった。
俺の作り出した人形達が、人々の動きを決めることができるんだ。
いずれこの世界も全て支配してやる、そんな魔王めいた野望すら芽生えていた。
俺は今日も卓を回す。卓を回して卓を回る。
もし意思で全てが決まるゲームがあるとしたら俺が最強であろう。
なぜなら全ての意思決定権は、俺が支配しているのだから。
そんなことを考えていたときであった。
『おお、我が神よ、私の望みを聞いておくれ』
頭の中に謎の声が響いた。
「神とはなんだ。俺はまだ普通の人間だ」
そう、まだ普通の人間。
俺がいずれこの世界を支配する神になろうがそれは変わらぬ
『ではいずれ神になる人の子よ、戦場へと足を運びたまえ』
その言葉を聞くと、俺は宇宙空間じみた場所へと放り出された。
これは確かに無の世界。
俺が一から世界を作るのに良さそうな世界じゃないか。
『早まってはならない、まだゲームは始まっていないのだから』
ゲーム、ゲームか。
俺が得意なTRPGというのも一種のゲームだ。
それが関係するルールならば、まず負けることはないだろうな。
『ではこれより、ルールを送る。熟読しておくのがよろしい』
俺は、脳内に送られてきたルールを読み込んだ。
決まったな、このルールならば俺が負けることはない。
『参加者は合計八名、皆曲者揃い。だがそなたが負けることはないのであろう?』
「そんなことは当たり前だ。既に相手を見つける手段も考えてあるからな」
『ではでは、残りの参加者を待つことにしよう』
どんな相手が来ようとも、俺の喜劇に踊らされるだけの存在だ。
俺は残りの参加者をどう倒すか考えながら時間を待った。
少し時間が経ち、ゲームが始まる時が来た。
『おおそうか、そうなのか、参加者が全員決まったとでも言うのか、さすればそなたを会場へと誘わねばなるまい。時を数える時間がやってきた。5、4、3、2、1』
この喜劇の劇場が開いた。作戦はもう決まっている。
この世界に移動してすぐ、俺は場所を調べる。
千里眼がいいかGPS的に場所がわかる土地レーダーがいいか。
決めた、千里眼で土地レーダーを使おう。
おそらく、ルール的には問題ないはずだ。
俺は脳内で日本全域を千里眼で見渡し、その状態で自分という人間をターゲッティングして場所を見る。
ターゲッティングというと他人を想像するものだが、自分という認識でターゲッティングをすれば、自分の位置がすぐわかる。
初期位置のダイスがクリティカルだ、開始位置に丁度いいマイナーな山の上ではないか。
俺はこの山にある地面の、できる限り下に部屋を作る。
『元から存在する物質、人物に直接的な変更(消滅含む)を加えることは不可能である』というルールだが、押し出すことは可能であろう。
土の密度というものは、そうそう大きいものではない。
小さい物質を入れてから広げて、押し出していけば、部屋くらい簡単にできるだろう。
地下深くに部屋ができたら、俺はそこへと瞬間移動する。
これで俺の地下要塞の完成である。
ここに潜んでいればどんな地上の攻撃でも届かないであろう。
地下要塞にはまず、テレビを作る。
異常な行動が見つかれば、それは参加者だろうからだ。
『その仮想世界には現実のように生活する人間が一億人存在する』なんてルールだ。
ニュースになりそうな現実的ではない人間を炙り出すには十分な情報源だ。
そしてここからが俺の作戦の本質、このNPCのルールを使わせてもらう。
この想像による創造能力は、好きな人間を好きなだけ作れるんだ。
俺は千里眼を使いながら全国各地に、俺が創造した人間をできる限り大量に配置していった。
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