ドラマチックツルギー④

俺は発想を転換させる。

最初は、銃だのナイフだのことばかりを考えていた。

確かに、追尾弾は便利だ。

どこへ瞬間移動したとしてもある程度は居場所がすぐわかる。


だが、こんなことを続けていても、決定打なんてずっと起こらない。

必要などどこにもなく、そばしてしまえばいいのだ。


生成するのは金属を溶かす強酸、王水である。

相手の知識レベルによっては、これで勝負が決まってしまう程の猛毒だ。それを雨にして降らせる。

この攻撃、鉄程度じゃ身体はズタボロになるだろう。


チンピラも負けじと、これに耐えられるように身体を限り変化させる。

そのまま真似をして、俺にも似たように王水の雨を降らせてきた。

だが俺は王水の対抗策を知っている。


俺の身体の周りに銀を纏わせる。

実は銀は王水で溶けない。

これで少しは俺に余裕ができた。

俺はその余裕を使って、相手の状態をうかがう。


チンピラもなかなかに頭が切れるようだ。

多少のダメージはあれど、この攻撃でチンピラを致命傷にさせることは出来なかった。

だがそれでいい、これでお前のが見えた!!


俺は相手に降らせた王水を、俺が知りうる限り最も可燃性の高い物質、その粉状に変更させる。

その粉の一部分を炎に変えると?

そう、小説でお馴染み粉塵爆発ふんじんばくはつである。


俺は、チンピラの周りにあった粉状の可燃物を一気に爆発させた。

チンピラは未だ生存。

だがこれもまだ想定内。


俺は、今のチンピラが変化させている素材を確認し、対策を練る。

よし、確認完了。

その物質なら何とかなりそうだ。


チンピラからの反撃が入る。

俺と同じように近くに物質を生成させての攻撃。だが、そんな手はもう俺には効かない。


俺は、出してくる物質に合わせて通さない壁を作ったり、時には自分の身体を少し変えて攻撃をいなす。


その調子で耐えていくとチンピラは、疲弊してきて隙が大きくなっていく。

俺は再度瞬間移動でチンピラに近づく。

また手元に銃を持った状態で、である。


チンピラは身体をまた変化させる。

チンピラが今まで色々な状況化で耐えた、信頼している物質へと。

だが、俺はもうそれを貫通させる物質を見つけている。

これを撃てばもう終わりだ。


瞬間移動で遠くに逃げるのも既に無駄だ。

さっきの粉塵爆発の際に発信機をつけさせてもらった。

これでチェックメイトだ、俺はその特殊な銃弾を放ち、見事チンピラの眉間に直撃。

そのまま貫通していった。


致命傷を受けたチンピラの身体が消滅していく。

俺はこれで勝てたのだろうか。


『参加者が一人死亡しました。残り参加者は七人です』


脳内にアナウンスが響き渡る。

あぁ、やっと勝てたんだな。

俺は安堵して少し休憩を挟んだ。

開幕早々参加者に出会うなどというアクシデントもあったが、こんな偶然滅多に起こらないであろう。


俺は千里眼を使い、さっき助けた女性を探す。

まだ遠くへは行ってないようだった。

俺は、一呼吸置いてからその女性の元へと向かった。


「さっきは大丈夫だったかい?」


俺は再会の偶然を装い彼女と接触する。


「あなたは、さっき私を助けてくれた人!ありがとうございます」


女性からは突然話しかけてきた俺に対し、悪い気がしてないようだった。

そしてその後彼女から発せられた言葉は、意外なものであった。


「あの、唐突なのですが、よければ私と付き合ってもらえませんか?」


「え?」


これは、俺の妄想なのだろうか?

こっちが告白したいくらいなのに相手の方から告白してくるなんて。

もしかして、この女性は俺が作り出した女性なのではないのだろうか?


俺は一旦深呼吸をして、この女性の消滅を念じる。

彼女はなんも変わりはなく、その場に残っていた。

つまり、この女性は俺の作り出した存在ではないのである。


ハーレムなんてもうどうでもいい。

俺はこの女性を愛していく。

それだけ彼女の告白に俺は一目惚れをしていた。


「やっぱり、駄目ですか?」


「とんでもない、もちろんOKだよ」


話がとんとん拍子に進んでいく。

なんて現実は小説よりも奇なのだろうか。


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