抱くぞ!

川谷パルテノン

グウィーーン

「おれはやるぞ」

「どした?」

「今日こそ幸泉こいずみを」

「幸泉を!?」

「抱く!!」

「うぉーーーーッ!!」

 タタタータタタータタタータタタン タタタータタタータタタータタタン タータタ タータタ ターターターン タターターン タターターアン(ロッキーのテーマ)

「本気か!?」

「マヂだぜ」

「おまえ、童貞だよな?」

「だから?」

「ハウトゥ オケィ?」

「抜かりない」

「それは! 伝説の黄金ハンド! 多頭たとうカカの『エルドラドテクニック108』!」

「緊張してないと言えば嘘になるな」

「幸泉は今どこに」

「博多の親戚ん家らしい」

「HAKATA!!!」

「ああ」

「ここ東京やど! 博多までのぞみでも5時間はかかる!」

「たった5時間やろがい!」

「金は! おまえ昨日スロットで3万溶かしたばかりじゃ」

「ここに2,000円ある」

「2,000円札……お前まさか!」

「幸泉を抱くために! 俺は! こいつを15倍にする!」

「負けなきゃよかった! 昨日負けなきゃよかったんだよ!」

「違うな。こいつは俺の晴れ舞台になる。勝ち鬨をあげにゃならん。だったら一発pチンコぶち当てかましてから博多へ行く! いくーーーッ!」

「なんでパだけ小声で言ったんだよ。わかった、その勝負俺にも乗らせてくれ」

「竹光……お前」

「旧500円硬貨。餞別だ。勝てよ、花井」

「いってくらああああ!!」


 春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。これは春はほのぼのと夜が明けはじめるころが最高だと言っている。だんだんと白んでいく山際が少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいていくのがたまらんなと言っている。花井はきっと負ける。しかしこれは春の夜明けだ。まもなくして妖精になれるはずの花井がその身を賭して幸泉を抱く決意をした。抱くソウル、つまり抱くソだ。あいつはようやく旅の出発地点に立った。色欲の亡者と化し何度もユーダイドるだろう。しかしこれが言い伝えの通りならばいつか花井は薪の王となる。最初の火になる。パリィが有効だ。その火は世界を照らす。ならばきっと幸泉も。いや、これ以上は野暮だな。花井、ローリングの時間だ。


 

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抱くぞ! 川谷パルテノン @pefnk

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