第3話 ここはどこ?


次に目が覚めた時、私は見知らぬ、質素な部屋にいた。

確か男に愛莉珠が倒されて、それに怒ってたら…その後どうなったんだか。記憶が朧げだ。


そういえば、愛莉珠はどうなったのだろうか。

私はいつもの癖でポケットからスマホを出そうとしたが、スマホがない。と言うより、服が変わっている。

先程まで制服でいたはずなのに、何故か黒のワンピースを着ている。ポケットもない。

没収、されたのだろうか。

これでは愛莉珠と連絡が取れない。でも、きっと愛莉珠はもっと不安な気持ちでいるだろう。私が、強くいなければならない。

1度、深呼吸をして落ち着いてから、この質素な部屋の中を見てみる事にした。


私が今横になっているのは、簡易的なベットみたいだ。フレームも鉄のようなものでできている。

そして横にあるのが学校でもよく見る折りたたみ式の長テーブルとパイプ椅子だ。

長テーブルの上には、なにか木の箱のようなものが置いてあった。

「…あの箱の中身には何が入ってるんだろう…」


私は気になって、ベットから降り、机の前に立ち、箱を手に取った。

別に開けるなとも書いていないし、開けてはダメ、ということではないだろう。

私は、木の箱の蓋を開けた。


「…え?」


中には、銃とナイフが一つずつ、入っていた。

私は恐ろしくなり、蓋を閉めた。


「はぁっはあっ……う、嘘でしょ。銃刀法違反で逮捕よ…こんなの持ってたら…」


私がそう呟いた時、天井にあったスピーカーから、さっき私達が会ったあの男の声がした。


「麗凛様、目をお覚ましのようで。」

「な、なんなの…こっちの声も聞こえているの…???」

「えぇ、もちろんでございます。ですがご安心を。ここに来た方は皆、貴方のような反応をします。」

正直、皆同じ反応をするから安心、とは思えなかった。とにかく、なんで自分は今こんな状況に置かれているのかを聞くことにした。


「何故、私は今ここにいるの??どうして連れてこられたの?」


「貴方達は今から、私達の下で働く、殺人鬼、つまりシリアルキラーになってもらいます。」


「…は?」

殺人鬼、それは、私から見たら名前の通り鬼だ。

人を殺すなんて、頭がイカれてるんじゃないかとしか思えないのだ。

そして、引っかかるのが『シリアルキラー』という言葉。聞き覚えのない単語だ。


「シリアルキラー、ってなんなの。」

「いい所に目をつけましたね、麗凛様。シリアルキラーとは、一般的に異常な心理的欲求のもと、1か月以上にわたって一定の冷却期間をおきながら複数の殺人を繰り返す連続殺人犯のことでございます。」

「そんなの、直ぐに警察にバレて捕まる。」

「いいえ、舐めてもらっちゃ困ります。こちらのの"シリアルキラー"達は、只者ではありません。死体の処理も、素早く、証拠を残さずにできますよ?フフフフ!!」

男は不気味な笑い声を上げた。

でも私には関係ない。今はここから抜け出して、妹の愛莉珠の元に向かわないといけない。

私がドアに近付いた時、外側から鍵を外され、中に2人の防護服を着た人がどすどすと入ってきた。


「だ、誰なの!!いや、離して!」

そんなこと言ったって私の願いは通じず、手首に手錠をはめられた。

口にも硬いテープを貼られ、喋ることさえままならない。私はそのまま、防護服を着た人に連れていかれた。

数個のドアしかない真っ白な廊下を歩かされていた時、ひとつのドアがガチャと開いた。

出てきたのは、私と同じ格好をした愛莉珠だった。


「ん"!!ん"ーん"!!!!!」

私は愛莉珠に気付いて貰えるように、精一杯、音を出した。が、無駄だった。

愛莉珠は耳栓も付けられていた。そこはもう対策済みだったのかもしれない。


愛莉珠に気づいて貰えなかったことに落ち込んで気力を無くしていたところ、私を連れていた防護服を着た人が足を止めた。

そしてひとつ、

「ここだ。入れ。」

と言い、私をドアの中に放り投げ、直ぐに外から鍵を閉められた。

「放り投げるなんて…なんなの?」

私が座りながら服を払った。その時、背後から声がした。


「この組織トップの前で、背を向け服を払うとは、無礼じゃないか?」

低く、威圧感のある声。でも、先程の不気味な笑い方をした男とは、また違う声だ。

「だ、誰なの…」

私は恐る恐る立ち、後ろをむく。


そこには、ナイフを持つ、スーツの男がいた。

ナイフには、血がついている。


「い、いやぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

私は耐え切れずに悲鳴をあげ、開くはずもないドアをひたすら叩いた。

初めて、「殺される」そう思った。




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