第16話

「こんなに喜ばれるなら、いらないものをもっと持ってくればよかったわ」


「だから、不用品を国民に押し付けるな」


「でも、みんな喜んでるわよ?」


「くっ」


 ルナの不用品は、確かに国民たちの益となっている。裏を知っている王子としては、なんとも言えない心情だ。


「あ、そうだ。聖女の力べんりまほう使って……できた!」


「ルナは何を作ったんだ?」


「アロエ育てたの。美容液作るんだー。移動の間、肌乾燥したら困るし……あ、これいらないから捨てよ」


「だから、ゴミをその辺に捨てるな」





「わ! また、王子妃様からの贈り物だ!」


「何に使うんだろう?」


「うわ、飛んできた緑のものが、私の古傷に……治った?!」


「さすが王子妃様だ! 万能薬をくださったぞー!」



 ルナの投げ捨てたアロエの皮で、傷が治ったようで、国民たちは大騒ぎだ。

 その様子を見て、王子は頭を抱えている。声を大にして本当のことを叫びたい気持ちを必死に押さえているようだ。



「あ、そうだ。あれもいらなかったんだった」


「お、まて、ルナ。どこからそれを出した!?」


「ん? 服の下?」


「って、それは捨てるな!」


「あ、もしかして、ユウェンもほしい?」


「……責任を持って回収しておこう。ところで、それはなんだ?」


「ん? 使用済みの汗取りパット〜ルナ特製ハーブの香り付き」


「それは絶対国民に向かって投げるな? 全部渡せよ?」


「ユウェンったら、変態さんなんだからー」


「ちゃうわー!!!」


 王子は、王子妃が国民にいろんなものを渡すから悔しそうにしていたと、後に国民は語った。

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