第14話

「ルナ、いこう」


 いつもより少し距離が近い気がする王子にルナは動揺する。

 な、なんか近くない? というルナの心の声は誰にも届かない。だが、ルナはそんな動揺をおくびも出さず、微笑みを浮かべている。


「あ……!」


「ルナ、どうしたんだい?」


「いいえ、ユウェン。なんでもないわ」


 聖女たる私を隣国に狙われたら困るものね! 誘拐されたり事件に巻き込まれた時に、仲のいい夫婦を引き裂いたとして、国際社会から隣国が非難されるように考えてるのね! あと、馬に蹴られてしまえってやつね! というルナの気づきは、“あ……”に乗せて口に出てしまった。しかし、空気を読んだルナは、すぐにユウェン王子にいちゃつき返す。


「ねぇ、ユウェン? いつものように二人きりでいろいろしたいなぁ?」


 隣国ウェストゥンの使者たちに聞こえるように、精一杯甘えた声を出したルナは、ユウェン王子の腕に胸を押し当てるようにして、抱きつく。


「……そうだな。あとでたくさんしよう」


「ねぇ、ユウェンー?」


「……あぁ」


 ユウェン王子には、ルナからのいちゃつきは刺激が強すぎたようで、ルナから見るとユウェン王子は耳まで真っ赤だ。隣国からは仲睦まじく映っているようだが。


「ねぇ、大好きなユウェン? ルナ大好きって言って??」


 そんなルナの言葉を最後に、隣国の大使たちから二人の姿は見えなくなったが、一応演技を続けているようだ。


「ルナ、大好きだ」


「ユウェン真っ赤でおもしろーい!」


「あんまり、からかうな。ルナ」


「でも、夫婦として必要じゃない?」


「……そうだな? あぁ、もう! 行くぞ!」


 突然ルナを抱き上げたユウェン王子は、後宮のルナの部屋へと急ぐ。突然抱き上げられたルナは驚きながら、ユウェン王子にしっかりと抱きついていた。





「ねぇ、ユウェン? 部屋に着いたよ? もう誰も見てないから離していいよ?」


「ルナ! あまり僕を挑発するな!」


「挑発? 全然してないけど? あ、もしかして、いつものように二人きりでたくさんいろいろする?」


「な!?」


「お仕事とか菜園とか遊びとか」


「あぁ……そっちか」


「そっち?」


 ルナが小首を傾げたタイミングで、ルナの諜報員であるスカイが飛び込んできた。


「ルナ様、ご報告できることがまとまりました」








ーーーー

「ルイス王子」


「なんだ?」


「ひやひやするので、ユウェン王子の寵妃ルナ様に接触しようとすることは、絶対にしないでくださいね?」


「なぜだ?」


「オリヤントと戦う事態になりたくないからですよ!」


「オリヤント相手なら余裕だろうし、こんな小国どうでもいいだろ?」


「オリヤントがいるから、我が国はララメールとぶつからなくて済んでるんですよ!!!?」


「ルナ嬢のためならそれくらい」


「自重してくださいね!??」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る