第11話

「ふんふんふーん!」


 ルナが鼻歌を歌いながら、水を生み出す。


「わぁ! 水が沸いたぞー!」


 人々は歓喜に沸く。




「ルナ、機嫌がいいな」


「猫被ったりしなくていいし、このままで過ごしていいって楽ね」


「オーバーなくらいの残念っぷりを見せびらかすようにしなくてよくなったしな」


「あれはやりたいようにやってるのとは違ったからね。これからはしたいように過ごさせてもらうわ」


「今までもやりたい放題だったんじゃ……」


「あ? なんか言った?」


「いえ、何も言ってないです」








 各地で水を沸かせ、奇跡の大聖女ルナとして、また別の名を残念美女とこっそりと名付けられながら、王子とルナは王城に帰った。





「王子! 国王陛下が!」


 王城についてすぐ、王子を呼びにくる侍従がいた。国王陛下の容態がまた悪化したらしい。


「すまない、ルナ! 共に来てくれ!」


「ええ、もちろん!」





「……これ、また同じ毒が盛られてないかしら? とりあえず、水出し巡りで習得した癒しの魔法と毒素排出のハーブティーで容体を安定させるわ」


「すまない。恩に着る」







「う……? わしは一体……?」


「国王陛下!」


「父上。ルナが救ってくれました!」


「ルナ嬢……ありがとう……」


「いえ、臣下として当たり前のことをしたまでです。国王陛下のご体調は、前回と同じでしたから」


「前回と同じ……か」


 国王陛下が顎に手を当てて悩む。



「ルナ嬢。申し訳ないのだが、今回の病の原因の予想はあるかな?」


「わかりません。ただ、前回と同じと言うと、下の方に原因があるのではないでしょうか?」


「すまないが、また診てもらえると助かる」


「かしこまりました」


 そう礼をとったルナは、王子と共に下がった。





「ルナ、前回と同じってどういうことだ?」


「他の勢力が陛下に同じ毒を持盛ったのよ。ということは、他にも同じ考えの者が隠れてるって意味だわ」


「前回の関係者は一掃したはずだから、そこの漏れという可能性は少ないよな?」


「そうなると思うわ」


「いったい誰が……」


「南方の国から手に入れているわね。南方のトローペン辺境伯が疑われるのは当然よね。トローペン辺境伯への恨み…は考えにくいわ。あの方、恨みを買うようなタイプじゃないから。となると、どこかの国からの差金でもあるのかしら? 少し調べるわ」


「すまない。助かる」


 国の諜報機関はもちろん、ルナの専属諜報機関にも隠れてそのようなことができるということは、大きな権力を持った者がどこかで関わっているのだろう。

 のんびりしている国民性である南方の国がそのような物事に関わっているとは想定しづらいが、全ての予測を候補に入れて、調べ上げなければならない。

 調査には少し時間がかかるであろう。


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