第6話

「お、お前! それをどこで手に入れたのだ!?」


「あ、」


 ルナから受け取った媚薬を王子が持っていることを国王に見つかってしまった。


「あ?」


「アーベント伯爵令嬢から受け取りました」


「なんだと!?」


 国王がアーベント伯爵の行動を確認し始めたちょうどその頃。



ーアーベント伯爵


「できましたわ! お父様!」


「本当か!」


「ええ。これでユウェン王子の心は私のものですわ」


「これなら、ルナ嬢には解毒されないか? あと、彼女が敵に回ることは避けたいからな……」


「はい。ルナ様は毒物にしか解毒なさらないので、この媚薬なら大丈夫ですわ。あの方はユウェン王子に興味がありませんから。最近、ユウェン王子の様子が断片的にしか入ってこないけど、寵姫と勘違いされて困っていらっしゃるご様子ですわ」


「なるほどな……お前の王妃即位が待ち遠しいな!」


「ええ、お父様」


 アーベント伯爵親子が二人揃って高笑いしていると、誰か尋ねてきた。




「誰だ? まぁいい、ちょっと私が対応してくるから、それを片付けておけよ?」


「わかりましたわ。お父様」







「王宮から、こちらの捜索を指示されております。国王からの命令書はこちらです。確認願います。只今、こちらの建物は結界内に閉じ込められました。物品その他書類などの移動は不可能となっております」


「くっ」




 アーベント伯爵親子は、媚薬を使って王子を魅了しようとした罪や違法に薬物を調合した罪や王子に薬物を盛った罪、脱税収賄など余罪が山のようにあり、投獄された。王子に薬物を盛ったことは重罪であろう。





「ユウェン。アーベント伯爵たちの行い、お前の発言で明らかになった。感謝する。ただ、お前が持っていた媚薬に関してだけは知らないと言っているんだが……成分を調べさせたところ、お前が持っているものはかなり上手く作られたものだと言われたが……一体……」


「父上。申し訳ございません。あの、これは、ルナが、」


「あー! おお、そうかそうか。すまないことを聞いてしまったな。媚薬にはそういう使い方もあるからな。御子に触らぬよう正しく使うように気をつけろよ。早く孫を抱きたいものだな。じゃあ、私は行くぞ。はっはっは」


「違うんです! 父上!! 違うんですー!」






ーーーー

「で?」


「大変申し訳ございません。誤解が解けませんでした」


 王子とは思えない大変美しい土下座で、ルナの前にひれ伏している。


「私が押し倒したっていう噂も消えてないのに、そんなプレイしてるって噂まで流されたら、王妃にならない方法がないじゃない……。なんとか不仲説を流すわよ! ユウェン。いい人を早く見つけなさい!」


「子は望めなくとも、王妃としての能力はルナが一番高いと思うんだが……」


「なにいってんのよ? いやよ! 予定もないのに子はまだかって急かされたり、変に責任のある仕事。柄じゃないわ。ユウェンと一緒に仕事するのは楽しいけど。そうだわ! 文官を目指そうかしら?」


「ルナ……お前が文官になったら、この国の仕事全部任せられそうだな……」


「さすがに嫌よ」


 “できない”ではなく、“嫌”というのがルナらしい。ルナの直属の部下たちも使えば、本当にそれくらい可能かもしれない。

 ルナの力で他国との外交は、優位に進められるであろう。王子がルナを王妃にと考えるレベルにルナは優秀であった。中身が残念なだけで。





ーーーー

「ユウェン! 見て! 幻覚作用のあるハーブを使って、人の記憶を消す薬を作ったわ! 私がユウェンを押し倒したって噂、飲み水にこの薬混ぜて消させましょう?」


「大量殺人計画みたいな方法するな! 普通にみんなすぐ忘れるだろ」


「うーん。いい方法だと思ったのに」


 サイコパス思考のルナが王妃になったらと思うと、やっぱり早急に他の王妃候補を見つけようと、王子は決意したのであった。

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