第18-3話 質問

 2年になった自分たちがどのようなクラスで今後の学校生活を過ごすことになるかを決めるあまりにも重大な発表に、恐る恐る結果を確認したものの私たちは全員同じクラスになることができた。


 こんな偶然があっていいのだろうかと懐疑的に考えていたが、今日から1年間私たちの担任を務める先生が教室に入ってきた瞬間、全て納得することができた。


 私たちの担任の先生は沢田先生だったのである。


 本当にただの偶然で全員が同じクラスになっただけなのかもしれないが、きっと沢田先生が裏で手を回してくれていたのだろう。


 そうでなければこんな偶然が起こるはずがない。


 沢田先生は私と紅が不登校になってしまったことに罪悪感を持っていた。

 だからもしかすると、これは私たちに対する沢田先生からの謝罪なのかもしれない。


 そしてお昼休み、私たちは6人でお昼ご飯を食べていた。


「賑やかになったね」

「……そうだな」


 紅はやり切った表情で他のメンバーの姿を見渡す。

 これが私たちの求めていた姿なのだから、見渡したくなる気持ちも理解できる。


 この状況をおかずに飯が食えるまであるかもしれない。


 とはいえ、お昼ご飯くらいは紅と二人で食べていたかったな、なんて思ったりするのはやはり贅沢だろう。


 そしてあわよくば、紅も私と同じ気持ちだったらいいな、なんて思ってしまうのは更なる贅沢だ。


「賀川、そのウインナー美味そうだな。俺のトマトと交換しないか?」

「いや交換が全く等価じゃないんだがどうしたらそれで交換してもらえると思うんだよ」

「……」

「な、なんだよ」

「……痛て、痛ててて、あれ、なんかおでこ付近が急に痛くなって--」

「わざとらしすぎるだろ! それもはや俺に対する嫌がらせだからな!?」

「これが嫌がらせだっていうなら、賀川がやってきた行為は間違いなく犯罪だったと思うが?」

「……すまん」

「そう言いながら素直にウインナー差し出すあたり可愛い奴だなお前」

「う、うるせぇ」


 紅が賀川君を脅している。

 そして紅と賀川君が仲良さそうに会話をしている。


 そんな光景が夢のようで、私は母親のような目線で二人の姿を見ていた。


 紅もまだ少し鬱憤が溜まっているのかもしれない。


「あ、あの、彩楽さん」

「和泉ちゃんどした?」


 紅が賀川君と会話しているすぐそばで、私は和泉ちゃんから声をかけられた。


「一つだけお聞きしたいことがあるんですが、訊いてもいいですか?」

「何でも聞いちゃって! エッチなことじゃない限りなんでも答えるから」


 そう言って和泉ちゃんは私に耳打ちするように話し始めた。


「彩楽さんって染谷君のこと好きですよね?」

「す、好きぃ!?」


 私は驚きのあまり大声を出してしまった。

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