第18-4話 宣戦布告
「ど、どうしたんだよ急に大きな声出して」
和泉ちゃんがとんでもないことを訊いてくるので、私は思わず大声を出してしまいみんなからの視線を一斉に浴びてしまった。
臼井ちゃんや賀川君に和泉ちゃんからの質問の内容を聞かれるならまだいいが、紅には絶対に聞かれたくない。
「べ、別に!? なんでもないよ!?」
「なんでもない声量じゃなかったんだけど……」
「だからなんでもないって! ほら、紅は賀川君と喋っときな!」
「……まあ訊かれたくないことなら無理に聞くのはやめとくよ」
紅が気の遣える人でよかった。
普通の人なら気になってこちらが話すまで無限に質問されるだろう。
私が紅を好きかどうかという質問の内容を紅に知られて、『いや、俺は好きじゃないから』なんて言われてしまった日には一瞬で不登校に逆戻りだ。
紅が再び賀川君との会話を始めてくれたので、私はみぃちゃんを含めた女子三人で今の内容について話し始めた。
「ちょっと和泉ちゃん、急になんてこと訊いてくるの!?」
「い、いや、あの、だって染谷君とすごく仲が良さそうだし、学校に復帰してくるタイミングも全く一緒だったし、染谷君のこと好きなのかなって。もしかしてもう付き合ってたりするの?」
「付き合ってるぅ!?」
「お、おいどうしたまた大きな声出して」
和泉ちゃんの言葉に私は再び大きな声を出してしまう。
それを聞いた紅と賀川君に私は再び視線を向けられてしまう。
「あ、ご、ごめんね!? ちょっと大きな虫が……」
我ながらにツッコミどころしかない言い訳である。
もう少しマシな言い訳ができなかったものか……。
「え、でも聞き間違いじゃなかったら付き合ってるとかなんとかって--」
「うんそれ聞き間違いだね」
「そ、そうか? でも確かに付き合ってるって--」
「聞き間違いだね」
「……そっか。すまん」
上手く言い訳をすることができなかった私にはもうゴリ押しするという方法しか残されていなかった。
ゴリ押し返しをされてしまう可能性もなくはなかったが、紅に限ってゴリ押し返しをしてくることはないだろう。
そして私は再び女子だけの会話に戻った。
「だから和泉ちゃん! 何てこと聞いてくるの!?」
「だ、だって気になって……」
「気になってって、なんでそんなに気になるの?」
「え、あ、あの、それは……」
「はいはい、いったん落ち着こうね」
熱くなってしまった私はみぃちゃんに静止され、少し頭を冷やした。
「う、うん……。ごめんね和泉ちゃん。詰め寄るようなことして」
「い、いえ。大丈夫です」
和泉ちゃんがなぜ私と紅の関係を気にするのかは分からないが--いや待てよ?
私と紅の関係を気にする理由なんて一つしか--。
「あ、あの、蔦原さん」
「え、あ、どうかした?」
和泉ちゃんは私に耳打ちするように言った。
「私、染谷君のことが好きなんです」
和泉ちゃんが紅を好き?
え、そ、それってどう……どうなっちゃうの!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます