第17-7話 いじめの終結
「……なるほどな。まあ賀川の処遇を決めるのは俺1人の権限ではないからなんとも言えないけど、染谷の案でいいんじゃないか?」
沢田先生は俺の意見に賛同してくれた。
まあ俺は沢田先生なら俺の意見を肯定してくれると思って発言してるんだけど。
「ちょ、ちょっと待て! 俺は退学するって言ってるんだぞ⁉︎ 謹慎したくらいじゃ俺の今までの行いに対する罰としては甘過ぎるだろ!」
今の賀川が退学をするという自分の考えを曲げることはないだろう。
とはいえ、このままはいそうですかと賀川を退学させるわけには行かないので無理矢理にでも納得させなければならない。
「この学校で賀川にいじめられて不登校になったのは俺と蔦原だけだろ?」
「ああそうだ。それがどうしたんだよ」
「その俺と蔦原がもう賀川を許すって言ってるんだ。それ以外の生徒がなんて言うかは分からないけど、俺たち意外にはそこまで酷いいじめをしてないなら謹慎でみんな十分許してくれるよ」
「だ、だからそれだけじゃ許されるわけねぇし気が済まないって言ってるだろ⁉︎」
俺が何を言っても賀川が俺の言葉に耳を貸す様子はない。
それでも、俺は賀川を退学させないために話を続けるしかない。
「たまにニュースとかであるだろ? 被害者が被害届を出さずに事件が終わっていくパターンが」
「たまにだけどな。それがどうしたんだよ」
「それと一緒の話だって言ってるんだよ。 俺と蔦原は賀川に俺たちに対する謝罪の気持ちがあるのは十分に分かってるし、俺たちは賀川を許して被害届は出さない。だから賀川は俺たちに対して罪を償う必要なんてないんだ」
「そ、そんな屁理屈みたいな話……」
「屁理屈でもなんでもねぇよ。まずは謹慎して、そこから賀川がいじめを働いたみんなに謝るところから始めようぜ」
「染谷が許したって他の生徒が許すわけ……」
「見てみろよ」
そう言って俺は蔦原達の方を指差す。
いじめられて不登校になった蔦原も、直接は被害を受けていない臼井も、蔦原に変わっていじめを受けていた和泉も、もう賀川を憎しんではいない。
「みんなお前を許すってさ。だからさ、今度はどう罪を償うかを考えるんじゃなくて、どうやって人助けをするかを考えていこうぜ
「……ごめん。本当に、本当にごめん。俺のせいで、俺のせいでぇ--っ」
それから賀川は人目を憚ることなく子供のように涙を流した。
賀川に涙を流す資格はないと思う人もいるだろう。
それでも俺は、賀川も俺たちと同じようにいじめの被害者であることを度外視したくはなかった。
後は先生達が賀川の処遇をどう判断するかだけである。
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