第17-8話 静かな染谷

 私たちは今日シャクドに集合していた。


 今までは紅と2人でやってきていたシャクドに今日は私と紅以外のメンバーと一緒にやってきている。


 紅とシャクドに集まっていた時はどのようにして学校に復帰するかを考えるのに精一杯で、こうして複数の友達と遊ぶ場面は想像できなかったら、


 しかし、これこそが私と紅が追い求めていた状況である。


「はい、それでは今日は賀川君の謹慎明けということで、一言感想をどうぞ!」

「か、感想って言われても……。迷惑かけました」


 今日私たちがシャクドに集まったのは賀川君の復帰を祝うためだ。


 あの後賀川君は先生達の判断で自宅謹慎を言い渡され、その判断を受け入れた賀川君は2週間の自宅謹慎に入っていた。


 そして今日が復帰初日なのである。


「昔の賀川君に戻ってくれて本当に良かったよ」

「べ、別に昔に戻ったわけじゃねぇけど。……でもすまん。金田にもめっちゃ迷惑かけたよな」

「うん、そうだね。すごく迷惑だった」

「--っ。言うようになったな」


 賀川君と金田君の一連のやり取りに私は微笑ましさを感じる。


 賀川君が改心して私も紅も、それ以外のみんなも全員が喜んでいるが、その中でも1番喜んでいるのは金田くんだ。


 昔からずーっと一緒で、本当の賀川君を知っている金田君は私たちの何倍も辛い思いをしているはず。


 だから、こうして賀川君がいじめから足を洗い真っ当な生活に戻ってくれたが自分のことのように、いや、それ以上に嬉しく感じているのだろう。


「さっちゃん、よかったね。色々と丸く収まって」

「うん。心配かけてごめんね。みぃちゃんも和泉ちゃんもありがと」

「わ、私は何もできてないけど……」

「心配してくれただけで十分嬉しいよ」


 みぃちゃんと和泉ちゃんの存在は学校に復帰した私にとってかなり大きい。

 いくら紅がいるとはいえ、女友達がいなければその寂しさは計り知れない。 


「……ねぇ、賀川君ってなんの食べ物が好きなの?」

「好きな食べ物? そんなの聞いてどうするんだよ」

「シンプルに知りたいだけだけど?」

「知りたいだけってお前な……」

「だって友達になったんだから、まずはお互いを知るところから始めないとね」


 私が賀川君に好きな食べ物を訊いたのは、友達になるためにお互いのことを知りたいから、というのもあるが、賀川君を中心にして会話を回すためだ。


 賀川君はこの場に居座りずらいだろうし、少しでも話を振ってみんなに溶け込んでもらいたい。


「……プリン」

「え、プリン?」

「な、なんだよ悪いかよ」

「いや、悪くはないけど……。ぷっ、ははははは! 賀川君プリン好きなんだ可愛ぃ!」

「お、おい笑うなよ! そんなに笑うならもう質問答えないからな⁉︎」

「えー、でも私ぃ、賀川君のせいで不登校になったんだし質問くらいなんでも答えてくれないとなぁ……」

「ぐっ……。分かったよ……。答えればいいんだろ答えれば」


 いじめられていたことをダシに使ったのは冗談半分ではあったものの、予想以上に効果が大きかったので今後も使っていくことにしよう。


 不登校になるまでいじめられたのだからそれくらいの反撃は多めに見てほしい。


 少しずつ場が盛り上がりを見せる中で、私の目に止まったのはあまりにも静かすぎる紅の姿だった。


「紅、静かにしてるけどどうかした?」

「え、あ、いや、その……」


---------------------------

昨日は寝落ちして投稿が滞ってしまいました‼︎

申し訳ございません。


明日2話分投稿予定です。


よろしくお願いしますマァス‼︎

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る