第16-2話 賀川の復帰
自宅謹慎期間が終了した賀川は今日から登校してきた。
今朝登校してきた賀川の様子を観察していたが、一度俺の方に視線を向けたものの特に鋭い視線というわけでもなく、そのまま自分の席へと座った。
まさかとは思うが、自宅謹慎に懲りて改心でもしたのか?
いや、賀川に限って自宅謹慎程度で懲りるとは思えない。
そんなことを考えながら、時間目の授業を終えた俺は休み時間に蔦原と臼井、和泉の3人と会話をしていた。
「賀川君大人しいね。この休み時間も私たちに嫌がらせする様子も無くすぐ教室出て行っちゃったし」
「ああ。謹慎に懲りてもういじめはしなくなったと思ってい
いのかどうか」
賀川が俺たちにやり返すかがあるのであれば、今朝登校してきて直ぐでも、この休み時間にでもやり返す時間はいくらでもある。
「とりあえずは楽観的に考えてもいいような気がするけど……。今後も注意する必要はありそうだね」
臼井さんのいう通り、楽観的に考えながらも、注意をしながら学校生活を送っていくのが最善策だろう。
もういじめをしてこない賀川に対していつまでも気を張っていたのでは、純粋に学校生活を楽しむことはできなくなってしまう。
とはいえ、完全に気を緩めてしまってはいつ賀川につけ込まれてしまうか分からないので注意をしていくべきだ。
「そうだな。それが良さそうだ」
「紅なんか気を抜きすぎて1時間目の授業ウトウトしてたでしょ」
「お、おまっ、わざわざ俺の方見てたのか」
「紅が真面目に授業受けてるか監視してたんだよ」
「か、監視ってお前な……」
蔦原には黙っていたが、俺も蔦原の方を見ていたのであまり強くは言えなかった。
「……」
「和泉ちゃん、どうかした? ちょっと体調悪そうだけど」
「あ、あのっ、いえ、その……」
蔦原な言われて気付いたが、確かに和泉の表情は曇っており体調が悪そうに見える。
「保健室行く? 私ついてくよ」
「だ、大丈夫ですっ。……ちょっとお手洗い行ってきます」
「私も一緒に行こうか?」
「い、いえ、1人で行くので大丈夫です」
「……分かった。気を付けてね」
「ありがとうございます」
そして和泉はトイレへと歩いて行った。
「ついていかなくて大丈夫だったのか? かなり体調悪そうだったけど」
「はぁ……。紅は何も分かってないねぇ」
「ならなんだよそれ」
「ふふっ。なんか2人を見てると仲のいい夫婦みたいに見えるね」
「「夫婦じゃない!」」
俺と蔦原は同じセリフを言って目を見合わせ、顔を紅潮させていた。
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