第14-4話 沢田先生

 HRの後、1限目の授業をこなした俺たちは沢田先生に職員室に呼ばれ、職員室へとやって来ていた。


 まあそりゃ急に不登校だった俺と蔦原が2人揃って登校してきたとなれば呼び出されるのも仕方がないだろう。


 さあ、何から訊かれるか--。


「すまなかった!」


 先生の急な謝罪に俺たちは目を見合わせる。


「ちょ、ちょっと先生顔を上げてください」

「いや、せめて頭を下げないと気がすまねぇ」


 自分が担任を持っているクラスの生徒が2人も不登校になり大きな責任を感じていたのだろう。


 とはいえ、俺たちが不登校になった原因は賀川のいじめであり、先生が直接的な原因ではない。


「大丈夫ですよ本当。先生って立場上動きづらさもあったと思いますし」


 担任という立場上、いじめている生徒を罰しようとしても、その生徒の親なども関係してくるだろうし、断罪は容易ではない。


「いや、そんなことを言い訳にしてるようじゃ先生なんて務まらねぇよ。本当にすまなかった」

「結局こうして復帰できたわけですし。もう顔を上げてください」

「本当にすまなかった。それにしてもどうしたんだお前たち急に。今まで俺がどれだけ連絡とろうとしても頑なに電話にも出てくれなかったっていうのに」


 俺が先生からの電話に出なかったのはもう学校に行く気がなかったからだ。


 学校に行かないのであればもう担任の先生となんて会話をする必要はないからな。


 しかし、なぜ蔦原まで先生からの電話に出ていなかったのだろうか。


「私、もう学校行くつもりなかったんで」


 蔦原の先生からの電話に出なかった理由を聞いた俺は目を丸くした。


 蔦原ももう二度と学校に復帰するつもりはなかったのか。


 蔦原に続いて俺も同じ理由を述べた。


「俺ももう学校に行くつもりなかったんで」

「ゔっ、お前ら直球だなぁ」

「先生もさっき俺のことついでとか言いましたよね?」

「そんなこと言ったか? 全く記憶にないんだが」

「結構根に持つタイプなんでね俺」

「正直すぎると逆に嫌われるぞ」


 正直かどうかなんて関係なく賀川には嫌われていじめられたけどな。


「肝に銘じておきます」

「私紅がいてくれなかったら私学校復帰してませんでしたからね? 先生もっと頑張って私たちのこと復帰させようとしてくださいよ」

「え、蔦原ってそんな強気なキャラだったか?」

「違いますよ? でもこれくらい強気にならないといじめになんて勝てるわけないでしょ?」


 そう言って蔦原は俺の方に視線を送る。


 その視線に俺がコクっと頷くと、沢田先生はフフッと微笑んだ。


「それもそうだな……。お前らが復帰してきて嬉しい反面、大丈夫かなっていう不安もあったんだが……」

「そんな不安してくれなくっていいですよ。もう私たちには信頼できる人がいますから」


 蔦原が自信を持ってそう言えるような存在になれたことを俺は誇らしくすら思う。


「そうみたいだな。まあなんにせよ、先生も全力を尽くすよ。お前らがいなくなってから賀川も落ち着いてたけど、どうなるか分からんからな」

「頼りにしてますよ。先生」

「任せとけ」


 こうして俺たちは先生という強い味方を得た。

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