第14-3話 対決
賀川の登場に教室内は静まり返る。
そんな場面で話し始める奴なんているはずもなく、その問いに答えるのは俺か蔦原の役目だ。
とはいえ、蔦原に話を始めさせるわけにはいかないので俺から賀川に返答した。
「復帰も何も、そもそも学校に来てない方がおかしいんだから教室にいたって問題ないだろ」
俺が賀川に逆らうように返答すると、賀川は面食らったような表情を見せる。
流石の賀川も俺に逆らわれるとは思っていなかったのだろう。
俺だって自分がこうして賀川に反論できる日がやってくるなんて思ってなかったからな。
俺がこうして賀川に反論できているのは今この教室に蔦原があるからである。
「--っ。お、おまえっ、俺様に逆える立場じゃねぇだろ。何逆らってんだよ」
「逆らえる立場も何も、俺たち同級生なんだから立場なんて同じだろ」
再び俺が逆らうと賀川は頭に血を上らせ顔を赤くしている。
「てんめぇ何様だっ!」
「かっ、賀川君っ! みんないるから、抑えて抑えて!」
声を荒らげる賀川を必死に抑えているのはいつも賀川と一緒にいる金田だ。
金田は賀川のいじめを助長するようなことをするわけではなく、どちらかといえばブレーキのような役割を務めている。
金田君のおかげでいじめられずに済んだ人もいただろつが、金田にはいじめ自体を止める程の力はないので、結果としては賀川と2人でいじめをしているようなものである。
「黙っていられるかよ! せっかく追い出してやったのにまたのこのこと登校してきやがったんだぞ⁉︎」
「じゃ、じゃあまた追い出せばいいじゃないか--っ⁉︎」
金田はなってしまったとばかりに口を抑える。
やっぱり賀川のいじめがエスカレートしてる原因は金田にもある気がしてくるな。
「……そうだな。どうせまたすぐ追い出してやる覚悟しとけよ」
「おーい、教室の外まで声聞こえてきてたぞーっ……て蔦原⁉︎ あ、あとついでに染谷も」
丁度話が終わりそうなタイミングで教室に入って来たのは
担任の沢田先生だ。
沢田先生はゴリゴリのマッチョで暑苦しい人なのに、なぜか数学の教師をやっている。
いやそこは体育だろ、と初見の人は皆口を揃えて言う。
てか沢田先生、今俺のことついでって言った?
ねぇついでって言った?
「お前たちが復帰してくれることをずっと願ってたんだよ……。よかった。復帰してくれて」
いや、お前たちとか言ってるけど完全にさっき俺のことついでって言ったからね?
今更涙ぐまれてももう遅いからね?
「まあそれはそれとして、騒がしかったみたいだけど何かあったのか?」
「……別にっ。何もありません」
「そうか。じゃあHR始めるぞ」
賀川は自分に悪い情報が流れそうになると息をするように嘘をつく最低な男である。
とにかく、俺たちと加川のファーストコンタクトは大きな問題なく終えることができたのだった。
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