第17-1話 突撃
染谷たちに刃向かわれてから数日が経過し土曜日。
早退した日はそのまま不登校になってやろうかとも考えていたが、ここで学校に行かなくなってしまえば大学にも進学できなくなるだろうし、負けた気がするので俺はなんとか登校を続けた。
そして今日はようやく土曜日。
学校に行かないで済む気楽な時間を、俺はどこに出かけるでもなく自分の部屋にこもりスマホをいじっていた。
というかもうどこかに出かける気力なんて残っていなかった。
これまでずっと一緒にいた金田まで俺に刃向かい、俺の周りにはいる奴は誰1人としていなくなった。
金田がいなくなってしまえば俺が親しく話せる人間なんて誰1人としていない。
俺は完全にクラスで孤立しており、そんな状況で学校に行くのは精神的に厳しかった。
そして思い出す。
俺がいじめっ子から助けた奴らにいじめられていた時のことを。
あの時もこうして1人になって、誰も助けてくれる人はいなくなった。
そんな俺はこの状態が続く前にまた誰かをいじめて、自分の地位を取り戻さなければと考えてしまうかと思いきや、これが今までの罰なんだなと考えると苛立ち仕返しをしてやろうと思うことはなかった。
学校で1人になってしまい我に帰ってみると、俺は今までどれだけ酷く醜い行為をしていたのだろうか、と自分のしてきた行動について後悔した。
金田に言われた通り、昔はいじめっ子からいじめられている生徒を救うような、そんな人間だったんだ。
それなのに、たった一度助けた人たちから裏切られただけで、自分が同級生をいじめるようになるなんて……。
昔の俺が見たらどう思うだろうな。
もう今更今までいじめてきた奴らに謝ったって、誰も許してはくれまい。
それならやはりもう、いっそのこと学校に行くのなんてやめてしまおうか……。
そんなことを考えていると、唐突に家のチャイムが鳴り響く。
今日は両親がいないので、家にいるのは俺1人だけ。
面倒臭いとは思いながらも仕方がなく1階に降り、インターホンの画面を覗く。
「はーい、どちら様……--⁉︎」
俺は思わずインターホンの画面から後退りしてしまった。
画面にはここにいるはずのない、というかいる理由のない染谷、そして蔦原、和泉、臼井、金田が写っていたのだ。
え、な、なんでコイツらが俺の家に⁉︎
というか俺の家の住所なんて……。
いや、金田に聞けばそれもすぐに分かることか。
というか金田のやつ、もう完全に染谷たちに染まりやがったな……。
俺にいじめられていた面々が俺の家にやってくるなんて、もう復讐に来たとしか思えない。
俺はいじめをしていたものの、腕っぷしが強いわけでもケンカに自信があるわけでもない。
ここで馬鹿正直に外に出ていくやつなんているかよ……。
よし、ここは居留守をかますことに--。
「おーい、賀川ー。いるのは分かってるから早く出てこーい。親御さんが悲しむだろー」
いやなんで俺がいるの知ってるんだよ!
いや、ただカマをかけただけというのもある。
俺が家にいるかどうかなんて分かるはずがないのだから。
そう思い2階に逃げようとしたその時、窓の方からコツコツと音がした。
「か、金田っ、おまえっ」
金田が俺の家の庭先まで侵入し、庭から窓を叩いてきたのだ。
金田は昔から俺の家に何度も遊びに来ているので、その辺りは熟知している。
「あーもう出てきゃいいんだろ出ていきゃ!」
こうして俺は外堀を埋められ、玄関の扉を開けた。
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