第15-2話 簡単すぎる対策
土日を挟んで月曜日、できれば先週の撃退で俺たちをいじめるのに懲りてくれていればなぁ、なんて夢を見ながら俺と蔦原は合流して、学校に向かって歩いている。
まあこの土日で俺たちに仕返しする方法をしっかり練ってきていることだろうけども。
「先週の1件で賀川君が懲りてくれてるといいんだけどなぁ」
「まああれで懲りる賀川ではないだろうな」
「だよねーっ。それにしてもなんで賀川君って人をいじめるんだろうね」
蔦原の発言を聞いた俺は、目を見開いた。
賀川が人をいじめる理由と言われる確かに考えたことがない。
別に俺は賀川に実害を与えたわけではないので、いじめられる理由なんて無いのにいじめられたし、蔦原だって俺を庇ってくれただけで不登校に追い込むほどのいじめをする必要がどこにあるのだろうか。
ただ気に入らないから、と言われたらそれまでなのだが、賀川にも何か俺たちを虐める特別な理由があるのかもしれない。
「それは確かに気になるな。まっ、どれだけ特別な理由があったって人をいじめることを肯定はできないけどな」
「それもそうだね。とりあえず今日も乗り切りますかっ」
そらから俺たちは他愛のない世間話をしながら学校へと向かった。
◇◆
学校に到着した俺たちは教室に入り目を見合わせた。
俺たちの机の上に、教科書がバラバラに破られて置いてあったのだ。
賀川の席の方へと視線をやると、ふんっと鼻を鳴らして胸を張りながら満足そうな表情を浮かべている。
「うわーっ。やってんねぇ。月曜日の朝っぱらから」
「いや、正直ここまで想像通りに動かれると最早面白さえある」
「ふふっ」
「ははっ」
俺たちは机の上に置かれた教科書を見て思わず笑い声を出してしまった。
そしてクラス中の視線が俺たちに集められる。
自分の教科書をバラバラにされて笑うなんて異常人のすることだろう。
しかし、俺たちはもちろん異常ではない。
この笑いは、俺たちが2ヶ月間必死に信頼度を高めてきた成果なのだ。
1人でいじめられていたときは誰にも相談できず、解決すらしようとしていなかったのに、今はこうしていじめられても大笑いできる。
「お、おい! 何笑ってんだよ!」
「あーごめんね? ちょっと賀川君の行動が予想通りすぎて面白くて」
「お、おもっ⁉︎」
賀川の面食らった顔を見て思わず吹き出しそうになったが、俺と蔦原は手で口を覆い、必死に笑わないように堪える。
ここで笑うと賀川の反感を買いかねないからな。
「な、なぁ賀川。とりあえず今日はこれくらいに……」
「うっせぇ! お前は黙っとけ! これで懲りてないようなら覚えとけとよ! もっと酷いことしてやるからな!」
「……あー、まあできるもんなら」
「で、できるに決まってんだろ! 教科書だけで済むと思うな……」
俺たちが会話をしている間にチャイムが鳴り響き、教室に先生が入ってきた。
「はい、ホームルーム始めるぞ……。ってまたなにかあったのか?」
「先生。賀川君に、俺と蔦原の教科書を破かれました」
「--⁉︎」
俺は自分が不登校になる前にはやっていなかったとっておきの作戦を繰り出した。
それは、単純明快であまりにも簡単。
先生にチクる、だ。
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