第9-1話 勉強しよう
『(彩楽)学校に復帰するために必要なことって何だと思う?』
蔦原から唐突に送られてきたRINE。
復帰するために必要な物なんて、今俺たちが必死に上げようとしているアレだろう。
『(染谷)信頼度だろ?』
『(彩楽)ちっちっち。分かってないねぇ紅は』
蔦原から送られてきたメッセージが蔦原の声で容易に脳内再生されされる。
たまに俺のことイラっとさせてくるの何なんだよこいつ。
『(染谷)じゃあ何なんだよ』
『(蔦原)それはねぇ……』
そうして蔦原から送られてきたメッセージの内容を見て、先程のメッセージに対する苛立ちは消え去り、焦りだけが残るのだった。
※※
「私が伝えたもの、ちゃんと持ってきた?」
「持ってきたよ。正直持ってきたくはなかったけどな」
俺たちは今日いつものシャクドではなく、図書館へとやって来ていた。
昨日蔦原から伝えられた学校に復帰するために必要なこと。
それは勉強だ。
信頼度を上げることに集中してしまいそこまで気が回っていなかったが、せっかく俺たちが信頼度を100%にして学校に復帰をしても、このままでは進級できないだろう。
俺たちが不登校になってから1ヶ月以上が経過しているので、進級するためには補習を受け、テストで良い点をとらなければならないはず。
そのために今日はお互い教科書を持ち寄って、勉強をすることにしたのだ。
「何言ってんの! ちゃんと勉強しないとせっかく登校してもどっちかだけが進級できなくて結果1人ぼっちってパターンだってあり得るんだからね!」
そう、問題はどちらも進級できないパターンではなく、どちらか片方だけが進級できないパターンである。
いや、どちらも進級できないのも間違いなく問題ではあるんだけども。
仮にどちらか1人だけが進級できないとなれば、俺たちがせっかく2人で復帰をしても学校内で一緒にいられる時間はどうしても少なくなってしまう。
そうなれば、2人ともまた不登校になってしまう可能性があるのだ。
そうなったら本末転倒もいいところだからな……。
必死に勉強しないと。
それにしても、蔦原は真剣に俺と2人で学校に復帰することを考えてくれているんだな。
そうでなければ、勉強しようなんて提案はしてこないはず。
未だに蔦原から言われた「私たち二人でさ、人生やり直さない?」という言葉については半信半疑な部分があった。
みんなから大人気で学校1の美少女である蔦原が、俺にそんなことを言ってくるなんて信じられないのも仕方がないだろう。
昨日電話で勉強をしなければならないことに気付かされた時はかなり焦ったが、蔦原が新たな復帰を真剣に考えてくれていることが分かったからか、不思議と焦りは消え去っている。
「そのパターンは考えてなかったわ」
「流石にこのパターンはマズマズでしょ? だから真剣に勉強するよ!」
「そうだな。とりあえず信頼度5%アップで」
蔦原が真剣に俺との学校復帰を考えてくれている。
それが分かっただけでも俺にとっては十分信頼度アップに値する。
「……もうっ。毎回毎回よく分からないタイミングで信頼度上げるのやめてよね」
「よく分からないってことは無自覚ってことだろ? 狙って獲得した信頼度じゃないってことなんだからいいじゃないか」
「まぁ確かにそうだね」
「それじゃあ……勉強教えてください蔦原先生」
「任せなさいっ!」
勉強が苦手な俺は、勉強が得意な蔦原から教わるしか留年を回避する方法はない。
蔦原に何のメリットがあるかはどれだけ考えても分からないが、俺はもう蔦原がメリットで動くような人間ではないことを知っている。
こうして幸先よく信頼度を上げた俺たちは、勉強を開始した。
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