第8-1話 久しぶりの遊びは
休日が終わり今日は月曜日。
蔦原に会うのは約1週間ぶりで、そこまで長い期間ではないのになぜか少し緊張してしまう。
「おっはよ〜。久しぶり、紅。元気してた?」
俺の緊張を知ってか知らずか、蔦原からは緊張の「き」の字も見受けられない。
しかし、そんな蔦原を見て俺の緊張はほぐれていった。
久しぶりに蔦原を見るせいか、前見た時よりもやたら可愛く見える。
「ボチボチな。ってか昨日電話しただろ」
「まあそうなんだけどさ〜。一応確認? 挨拶? みたいな」
「菜々美さんはあの後特に何も言ってなかったか?」
「うん。どこでそう思ったのかは分からないけどいい子だねっていってたよ」
きっと菜々美さんは蔦原がトイレに行っている間の俺の発言を聞いてそう思ったのだろう。
今考えても恥ずかしさで顔が爆発しそうになる。
実の母親の前で、『絶対に娘さんを学校に行かせます!』だなんてよく言えたな俺。
あの時の俺は間違いなくどうかしていた。
それでも、そう言ったことに対して後悔はしていない。
「悪印象を持たれてないならよかった。それで今日は?」
「今日はね〜。久しぶりだからパーっと遊ぼう!」
「パーッと遊ぶ?」
普段よりテンションが高い蔦原に手を取られ、俺たちは店を出た。
※※
蔦原に連れられてやってきたのは遊園地だ。
確かに遊園地ならパーッと遊べそうである。
「いいのか? こんなところまで来て。帰りもいつもより遅くなるだろうけど」
「お母さんにはちゃんと伝えてきてあるから。それより紅は大丈夫だった? 何も考えずに無理矢理連れてきちゃったけど」
「うちの両親はいつも帰り遅いから。俺の帰りが遅い時は連絡さえすれば蒼も1人でご飯くらい作れるし」
「ならよかった! よし、今日はパーっと遊ぼう!」
「お、おー」
それから俺たちはジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷に入ったり、ゴーカートに乗ったりと遊園地を思いっきり楽しんだ。
こんな美少女と2人で遊園地だなんて信じられない。
と言うかもはやデートだよなこれ。
俺は遊園地で遊んでいる間ずっと考えていたことがある。
これが信頼度を上げる目的を持っている俺たちがすることなのだろうかということだ。
確かにこれまでもシャクドで蔦原と会ってただ2人で会話をしているだけで信頼度は上がってきた。
しかし、遊園地となると信頼度を上げるというよりは、もう完全にただ遊ぶことが目的となっている気がする。
そりゃ俺はそれでも楽しいし構わないんだけど、蔦原はそれでいいのか?
こうしてただ遊ぶだけではなく、手っ取り早く信頼度を上げる方法を考えた方がいいのではないか?
そんなことを考えていると、心の底から遊園地を楽しむことはできていなかった。
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