第3-1話 行きたいところ
昨日シャクドで繰り広げられた信頼度を向上させるゲームのおかげで信頼度が5%に上がった俺たちは、今日もシャクドへとやってきていた。
まあ5%上がったとは言っても100%分の5%なので、まだまだ長い道のりである。
とはいえ、間違いなく進歩は進歩なので前向きに考えることにした。
「今日は何を? また昨日とは別のゲームでもするのか?」
「昨日も言ったでしょ。昨日は初日だったから分かりやすく信頼度を上げる何かをしないとなーて思ってゲームにしたって。だから、今日は普通に遊びます‼︎」
「普通に遊ぶ?」
小学生の頃は俺も友達と遊んだ記憶があるが、中学に上がってからはまともに友達と遊んだ記憶が無い。
なので、『普通に遊ぶ』と言われても何をするものなのかなんて想像できるはずもなかった。
「え、何でそんな首傾げてるの?」
「いや、普通に遊ぶって言われても何するもんなのか分かんなくてさ」
「……そっか。普通にって言ったら普通にだよ。ショッピングでもいいしカラオケでもいいし、ボウリングでもいいし映画を見に行ったって何してたっていいの」
「そういうもんなのか」
「そういうもんだよ。紅は何かしたいことある?」
したいこと、と言われてもすぐには思いつかない。
すぐに思いつくと言えば……。
「そりゃやっぱり--」
※※
俺たちはシャクドを出てゲームセンターへとやってきた。
『どこへ行きたいか』と訊かれれば今の俺が思い付くのなんてここくらいしかない。
「ゲームセンターって何回来てもテンション上がるよね〜。紅君はゲーセンに来て何してたの?」
「基本ユーフォーキャッチャーかメダルゲームだな。メダルなら減らさなければお金はかからないし」
「何気にすごいこと言ってるね。今日は私がゲーセンでやりたいことやってもいい?」
「ゲーセンに行きたいっていう俺の希望を聞いてもらったわけだし、それくらい構わないけど」
「よし、じゃあアレしよ」
そう言って蔦原が指さしたのはプリクラ機だ。
ゲーセンには毎日のように通っており、ほぼ全てのゲームを網羅したのではないかと思っていたが、プリクラは別腹だ。
プリクラなんて撮ったこともないし中に入ったこともない。
なんなら眩しすぎるので視界に入れようとしたことすらない。
というかあの中って密室みたいなもんだよな? あの中に蔦原と2人で入るのは流石にハードルが高い。
それに、撮影の際にどんなポーズを撮ればいいのかも分からないし……。
「プ、プリクラは流石に……」
「もしかして恥ずかしいの?」
「は、恥ずかしくはないけど……」
プリクラ機の中に入ることに躊躇していると、プリクラエリアの入り口に置かれた立札が目に入り、俺はその立て札に書かれた一部分を読み上げた。
「ほ、ほら、男性の方のプリクラエリアへの侵入はお断りしますって書いてあるし」
「よく見てよ、男性のみでの侵入はお断りって書いてあるけど、男女での侵入は禁止されてないよ?」
立札に書かれた内容をよく確認もせず目に入った都合のいい文だけを読み上げたが、自分の首を絞める形となってしまった。
「--っ。そ、そうか……」
「そりゃそうだよ。プリクラなんてカップルで撮るのが1番の目的みたいなとこあるし、男女で入れなかったら困るでしょ?」
「カ、カッ……。それもそうだな」
蔦原にそんな気が一切ないのは百も承知だが、カップルという言葉に俺は更に動揺してしまう。
これ以上の言い訳が思い浮かばなかった俺は、蔦原を追いかけて渋々プリクラ機の中へ入っていった。
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