信頼度アップ編
第2-1話 信頼度ゲーム
『(彩楽)次の会議、駅前のシャクドでいい?』
『(染谷)おけ、いつにする?』
『(彩楽)明日の10時30集合でどう?』
『(染谷)了解』
昨日蔦原から次の予定について連絡があり、俺はその予定通り駅前のシャクドへとやってきていた。
まだ蔦原は到着していないようだったので、注文はせず席に座って蔦原を待っている。
シャクドとは大人気ハンバーガーチェーン店で、売りはサメ肉のハンバーグだ。
しかし、サメ肉のハンバーグはあまり人気がないのが実態である。
連絡先を交換したとはいえ本当にメッセージが送られてくるのだろうかと疑問に思っていたが、俺が家に到着するとすぐに蔦原からメッセージが送られてきた。
昨日蔦原から提案された内容はあまりにも現実味がない内容だったので真に受けてはいなかったが、本当に俺と2人で学校に復帰する気なんだな……。
優しい蔦原のことなので、俺を学校に復帰させてあげたいという気持ちもあるのだろう。
しかし、流石に第1の目的は自分が学校に復帰することなはず。
蔦原からしてみれば自分が学校に復帰するために同じく不登校である俺という存在は都合が良かったのかもしれない。
それにしても10時30分集合って早すぎるよな。
まあ俺たちの活動限界は学校が終わって帰宅してくる生徒たちに出会さない14時30分ぐらいなので、早い時間に集合するのは理にかなってるけど。
「お待たせ〜」
後方から息を切らしたような蔦原の声が近づいてきて、俺はスマホの画面から視線を上げる。
「俺もさっきついたばっかだから--」
その瞬間、俺は言葉を失った。
昨日の蔦原はゲームセンターに来ていたのもあってか、ゆとりのあるパンツを履き大きめの白パーカーに帽子を被るという、オシャレというよりは芸能人がお忍び旅行に行くときのような、自分を隠すためのコーディネートだった。
しかし、今日の蔦原は昨日のイメージとは真逆の服装だったのだ。
スラっとしたデニムにベージュ色をした生地の薄めなセーターを着用し、セーターの前側をズボンに入れ小さな黒いショルダーバッグを持っている。
女の子女の子した服装ではなく、大人びたその服装が蔦原にはよく似合っていた。
「どうかした?」
「い、いや。なんでも」
「そう? ならいいけど。急いで来たんだけど身支度に時間かかっちゃってさ……。ごめんね」
「まだ集合時間の5分前だし謝る必要なんてないよ。それよりまずは腹ごしらえでもしようぜ」
「そだねっ‼︎ 私ポテト食べたい‼︎」
こうして僕たちは昼食を購入するためレジへと向かった。
「あれ、ポテトは要らなかったのか?」
先程はポテトを食べたいと言っていた蔦原だったが、蔦原の前に置かれたプレートの上にはポテトが置かれていない。
「食べたかったんだけどね。この場にポテトが2つ存在したらダメなんだよ」
「……?」
ポテトが食べたいと言っておきながら、なぜこの場にポテトが2つ存在してはならないのだろうか。
よく分からないが、このまま話を進めよう。
「それで、今日は何すんの?」
「今日は早速、信頼度を向上させるためのゲームをしますっ。て言っても向上するどころか悪化する可能性もあるんだけどね」
「なにその怖いゲームやりたくないんだけど」
「つべこべ言わない‼︎ それにこれから会うたびに信頼度を上げるためにゲームしよってわけじゃないからさ。今日は初めてだし、分かりやすく信頼度を上げようかなって」
蔦原と予定を決めて会うのは今日が初めてなので、何もせずにシャクドにいるだけでは確かに信頼度は上がりづらいだろう。
とはいえ、悪化するという部分だけがどうしても飲み込めないんだが。
「……まあとりあえず分かった」
「じゃあ早速始まるね。今回は今私たちの目の前にあるポテトを使ったゲームをします」
そう言って蔦原が指を差したのは俺が購入したセットに付いているMサイズのポテトだ。
「俺のポテトを人質にする気か」
「よく分かってるじゃん」
「いや、わけ分かわないから説明してくれ」
「だよねー。私たちの机にはポテトが一つだけあります」
「だな」
「そしてここに私が作ってきた⚪︎と×の札があります」
蔦原はクイズ番組で出演者が持っているような⚪︎と×の札を作ってきており、自信満々にその札を俺に見せつけてきている。
「……わざわざそんなもん作ってきたのか」
「2人ともが⚪︎を上げれば、そのポテトは山分けでお互いが食べれます」
「……ほう」
「でも、どちらか片方が×をあげると、×を上げた方が独り占めできます」
「なるほど」
「どちらも×を上げた場合は持ち帰って家族に提供でもしましょう」
「とりあえず俺のポテトが人質に取られた上に俺がこのゲームをすることになんのメリットもないことには触れないでおいてやる」
「それ助かるっ。さあ、仁義なきゲームの始まりだよ‼︎」
こうして了承もしていないのに、いつの間にか僕は蔦原の考えてきた謎のゲームへと参加させられることになった。
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