第14話「日々、愛妻弁当が届く日もある」

今日も今日とてお昼休みがやって来た。そして、お腹が凄く空いている。


「日蔭~お昼食べよ~」


いつものように穂村は私のところへやって来た。


「いいよ」


そういって、私はお弁当箱をだすため鞄に手を入れる。だが、そこにはないもなかった。


「…まじか…しまった。弁当箱、家に忘れてきたかも」


「あちゃー、それは、やっちゃたね~いただきまーす!」


そういって、穂村は自分のお弁当箱を開けて箸をつつく。卵巻きかな?を食べた。穂村は、こういうところがある。このこ、意外にドライで自己中なとこがある。私は弁当無くて困ってるのに。その時だ、教室の扉が開いた。


「やぁ、我が妹よ、その顔はお弁当箱が無くて困っているようだね」


私のお弁当箱をもって現れた。きらっんと星が出ている気がする。正直、うざい。でも、今は姉さんが神に見える。


「姉さん…神様…」


「え?」


私のつぶやきを聞いた穂村がポトンと次に食べようと箸でつまんでた唐揚げを落とした。


「…………」


穂村は、表情を暗くして無言になった。私は、そんな穂村を置いて姉さんの元に弁当箱を受け取りに行こうと立とうとした時だった。


「なんですか、シスコン先輩」


気がついたら、姉さんの元に穂村が居た。え、瞬間移動?心の声を聞く次は瞬間移動ですか?…………てか、シスコン先輩?姉さん、穂村にそんな名前で呼ばれてるの?昔はもと……まぁ、いいか。確かに姉さんはシスコンだし。


「やぁ、つーちゃん。今は君と話してる暇はないんだ」


そういって、ポンと穂村の肩を押して私の元に姉さんがやってくる。


「はい、妹ちゃん弁当箱」


「あ、ありがとう……でも、いいの?…その穂村がすごく…」


体をピクピクさせている。あと穂村の周りの空気が黒い本当に真っ黒。あ、雷出た。え、こわ。


「あ、あの、さ、…その、妹ちゃんがよかったらさ、一緒にお昼どうかな?」


私は、姉さんが自分のお弁当箱も持っていることに気が付いた。しらじらしいな、このシスコンは。てか、穂村の雷さっきより増えてんだけど。




まぁ、なんやかんやあり三人で昼ごはんを食べることとなった。


「あ、あぁ、すまない…今日は姉妹水入らずで昼食をとりたいんだ…その、また誘ってくれ、次は一緒にたべよう」


そういって、できる人の笑みを話しかけてきた私のクラスメイトに向けた。…いや、ちょっと待って、うちの姉はどうしてうちのクラスで人気者なんだ?


「よし、後は君だけだ、つーちゃん」


「何がですか?シスコン先輩」


「何がですか?って?そんなわかりきったことを聞くのかい?」


「…………ねぇ、お弁当って日蔭が自分で作ってたよね?日蔭、これ美味しそうだから…一つ貰っていい?」


「別にいいけど」


「うんん~美味し!」


穂村は満面な笑みで頬張った。だけど…


「ありがとう、つーちゃん、今日は私が作ったんだ」


と、言うことだ。言わずもがな穂村は固まる。


「ありがとうね、姉さん。せっかく今日作ってくれたのに忘れちゃって」


「いいよ、別に、気にしてない………いや、だが、お詫びとして、この卵焼きを食べさせてもらおうかな?…あーん」


そういって、姉さんは口をかけた。本当に…シスコンなんだから…でも、まぁ、これくらいならいいかな?

私は、箸で卵焼きを持ち上げ姉さんの口元へ持ってゆく。


「日蔭!?」


奇声をあげる穂村。


「まぁ、これが差ってやつだね…もぐもぐもぐ…おいし」


どや顔のシスコン(姉)。


「…………」


虚無(私)。…………なんだ、この茶番は……。


「ねぇ、日蔭…私も………あーん」


穂村が口をあけ私を待っている。…しゃーねぇーなー。私は、箸をもって穂村の元に持っていく。………なんか、これ、エロいな。…なんか、ドキドキするんだが………………。


「い、妹ちゃん?」


姉の不安げな声が聞こえる。私の顔やばいことになってんだろな。すげー赤いんだろーな……あぁあ、恥ずかしな……。

そして、穂村のもとへたどり着いた。


「もぐもぐもぐ……………まぁ、味は普通だけど、日蔭のおかげですごく美味しく感じたよ」


「…そ、そうか」


てか、私食べてねーじゃん…お腹空いてるのに…………間接キ……やめておこう。これを今触れると、もっとややこしくなる。うん。やめておこう。


「ふふふっ…シスコン先輩~」


私でもうざいと思うほどの穂村の煽っている声。


「これが~、差って・や・つ・ですよ~」


姉さん、すげー煽られている。だが、姉さんは私を見ている。まだ私には希望があるとでも言っているように。


「妹ちゃん、嘘、だよね」


凄く頼りない声。姉であり生徒会長とは思えないほどの情けない声。こういう時、私は味方してやるのが普通なのだろう。だが、私は頷けない。確かに、穂村へのあーんは全くの別物だった。だから、目をそらすことしかできなかった。ごめんなさい。姉さん。不出来な妹をどうか、許してください。


「ふん、勝った」


穂村がボソッと呟いた。それと同時に、姉さんは膝から崩れ落ちて中身のないペラペラのようなものになった。私は、姉さんが紙に見えた。…………………ちょっと狙った。


「さ、さ、さ、気を取り直して、お昼ご飯食べよ!日蔭!」


「あ、あぁ」


この姉さんどうしようか。と思っていたが、昼休みが終わるころには立ち上がり教室へ戻って行った。「これで勝ったと思うなよ!」と言い残して。


「塩まいとこ、塩」


そうやって、塩をまこうとする穂村を苦笑いして見ていることしかできなかった。でも、……


「穂村、もしさ、私と結婚するってなったらさ、穂村も姉さんの妹になるってことだよ?」


「…………」


穂村は塩をまくのをやめこちらを向いて言う。


「……氷条家に養子に行く?そしたらさ、私の従妹になれるよ?、従妹は結婚できるんだよ?」


から笑い。穂村はマジの顔で言っている。なんて、言えばいいんだよ。


「……あはははは…」


「えへへへへ」


私はから笑い。穂村は照れ笑い。…どーすんだよ。この空気。


そして、昼休みを終えるチャイムが私を救うのだった。








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