第13話「日々、放課後デートをする」
今日も今日とて、全授業が終わり放課後である。そして、恋人の穂村にも絡まれてもいる。
「ねぇ、ねぇ~日蔭~放課後デートしよ~」
「……いつもしてるし、結局断っても、私についてきて、最終的にデートになるんじゃねぇーか」
「うん。そうだけど、誘いたいじゃん!」
にへらと笑う穂村に私は苦笑い。まぁ、放課後デート断ったことはないんだけどな。
「でも、またこないだみたいなデートしたいよね~、」
ふと、そんなこと言われた。言われてしまった。あぁ、確かにあの日のデートはよかったさ、でもさ、私は、帰り際のあれが全然離れないんだよ……。記憶はないとか、何とか言ってたけど、あれだけは忘れられねーんだよ……初めてだったし…
でも、どうやら、穂村も思い出したらしい。どこか、いつもより顔が赤い。
「………………、今度は私から…そのしたいからさ…そ、それまでは…その…まっててね!」
「…………うっせ…ばか」
なんとも言えない甘ったるい空気。
「ま、まぁ…その、…最近できた喫茶店にでも行くか…」
「うん。そうだね、行こ」
校門を出ると、もう太陽はそこまで高いところにはなく辺りは少しオレンジがかっているように思える。だが、春を迎えてるため、まだ青さの方が目立つ。
「最近、太陽が沈む時間遅くなってきたよね~、もうなんだかんだいってて5月だし~」
「そうだな~もうそろそろ、梅雨か~、私、嫌なんだけど…なんか、若干熱くなってくるし…湿気で体、べたべたするし…」
「…そこで、ゴールデンウィークのこと飛ばして、梅雨に走る日蔭、すっごく、日蔭らしいけど、わかる~」
こんな、どうでもいいような会話をしてほんの少し笑ったり怒ったり。私たちの日常はそんな感じで進んで行く。
「日蔭はなに飲むか決めた~?」
「…いや、どうやって、決めんだよ、まだ店にもついてねーぞ」
「えー、だって、新しい店出来たら、メニュー見て値段設定とか見るところから始めるでしょ~普通~」
「………それは、仕事病が出てるだろ」
「あれ?いつも、私、どーやって楽しんでたっけ?あれ?」
眉間をキュッと寄せて、唸っている。可愛い。…まぁ、それはそれとして、最近、穂村が管理している会社はどうやら、飲食店に力を入れているらしい。こないだの、デートの時に気になったらしく改革をしたくなったらしい。てか、こいつ、本当に高校生なのか?まぁ、事実やってることは高校生を超えてはいるんだが…。
「なぁ、穂村気になったんだが、土日に働いていることは知ってるんだが…やってる事からして、それだけじゃ回らないと思うんだ…穂村、本当に、いつ働いているんだ?」
「なに~気になる~?」
凄く、ねちっこい視線を向けてくる。
「なんだよ」
「いーや、もう、将来のこと気にしてるのかな~って」
「…なんで、そうなんだよ」
「え?だって、私の仕事を気にするってことは、つまりさ~日蔭が家で私の帰りを待って、私が稼ぎに出る。そして、疲れた私を優しく包んでくれる日蔭。でも、夫婦仲を保つためにはそれなりの収入は必要になるってことに少し不安を覚えてしまう日蔭。ってところから聞いたんでしょ?」
「ちげーよ、飛躍しすぎだ、てか、なんで、私が家なんだよ、逆かもしれねーだろ」
「…突っ込むとこそこなの?…いつもの日蔭なら、夫婦ってとこに突っ込んでくるのに」
「っ////」
私が、照れた顔を見せると穂村は少し固まった。よって、両者頬を赤色に染める。
し、し、しまった…。やってしまった。やばいほど胸かなってる。はやっ!!!やばい……。いや、ここだ、ここで仕掛けろ私!!!いまなら…今の赤面している穂村になら私は反撃できる気がする…
いや、するんだ!!!
「…別に、いいじゃねーか、私は…その…穂村と…そういう中になれたらいいな…って思ってるんだ…わりーかよ…」
「…………今の日蔭嫌い……私に、いつもみたいにやられてたらいいのに、最近の日蔭は私の様子見てやり返してこようとしてくるから…生意気…」
ムスッと頬を膨らましている。だが、穂村はそれでいて、頬は、先ほどよりも赤くなって瞳は揺らいでいる。勝てる気がした。だから、私はさらなる追い打ちをかけるため足を止める。そして肩を抱き寄せ穂村の揺らぐ瞳をじっと見つめた。
「……、穂村は、私と結婚するのは嫌なのか?」
「……………いや…じゃない…」
お互いの息がかかる距離に顔がある。俯瞰してみると、キス寸前の恋人がお互いの瞳を見つめ合っているような。そんな感じ。だが、この時、穂村は何か覚悟を決めた目になり、さらに顔を近づけた。そして、私の頬に穂村のやらかい唇が当たった。
当然、私の頭は沸騰する。そんな、私を見て少し下がり、数歩先まで歩く穂村。
「…生意気な、恋人にささやかなお返し…それに…こないだ、まだ、ここは譲らないって言ったじゃん……日蔭…私に勝てるなんて…千年も早いよ……ばか」
「……………」
私は、キスされたところを優しく触れぼーっとする。穂村はかろうじて意識を保ってはいる様だが、その頬のほてりは今もまだ消える気配はない。もしかしたら、私が勝てる日は、千年よりも早いのかもしれない。
「…そんなことはないよ、穂村にも攻められたいけど…それはまだ、だから、まだなんだからね!!!」
穂村の、ツンデレ風セリフ。ごちそうさまです。
「う、うるさい!、行くよ日蔭!、早くいかなきゃお店しまっちゃうよ!」
そいって、穂村は走り出した。そして、どさくさに紛れて私の心の声と会話する穂村。
「あ、ちょ、ちょっとまってよ!」
私は頭を切り替えて、穂村の後を追っかける。その、追いかけられる穂村は無邪気な小学生の様な笑みを浮かべながら走る。そんな、笑顔を見て、少しドキドキしながらもこの感じが好きな私も微笑みながら走る。
そんな、日蔭と穂村だからこそ、2人の間に青春の風が吹き荒れていた。
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