第7話「日々、会えない日だって出てくるよ」

今日も今日とて、私は恋人に絡まれなくてよかった。今日は月曜日、昨日のデートの翌日である。昨日の帰り道からなんとも言えない感じになって学校でどんな顔すればいいか悩んでいたら、よいことなのかわからないが、風邪をひいてしまったようだ。もともと、私はアウトドアの人間ではないため、丸一日使える休日に、さらにはデートでしゃぎすぎたこともあり、すぐに体調が崩れた。まぁ、もともと病弱なことも関係はしているのだろうけど。でも、これで、今日は穂村に会わずにすむ。まぁ、お見舞いには来そうだけど。

そこで、ふと私は思い出す。

「ねぇ、穂村、明日学校で会えるでしょ?」と言ったことを。まぁ、昨日のこともあるし、穂村は忘れて…いや、こういう時に限ってこういうことを思い出し口実にするのが穂村と言う人間だ。

思ったら、即行動。スマホを取り出し今日は風邪で学校にはいけないむねを連絡しようとする。だが、それは阻まれた。私は、スマホを取り上げられる。


「こら、妹よ、風邪をひいているというのにスマホを触すとはいい度胸ですのぉ~」


「か、返してよ」


「だめです~」


舌をベーと出し小学生の様な事をする女。名前は、日蔭 灯香ひかげ ともか私の一つ上の姉である。


「穂村に今日休むって言わなきゃ…」


「ふーん」


意味ありげにあいづちを入れてくる。


「なんだよ」


「いや、べっつに~、私はまた、可愛い可愛い妹を奪われたわけだ」


姉は、少し、眉間にしわを寄せ、腕を組み私のスマホを軽く振る。


「な、なんだよその言い方…穂村は、あ、アイツとは全く違う!!!」


私は、少し興奮してしまったせいで、風邪の辛さをもろで食らってしまって、咳がひどくなる。そんな私を見て心配そうな表情を顔のに出した姉だが少し覚悟を決めたような顔つきになり、口を開いた。


「…別に、私はかまわないんだよ。妹ちゃんが、幸せになってくれるのなら別にかまわない、それに、つーちゃんがそういう子じゃあないってことも知ってる。前の私なら全然応援したし……うそ、それは無いな……でも、たとえ、同性を好きになったとしても、女同士だからとかいって妹ちゃんの恋路の邪魔になるような、ことする馬鹿どもを締め上げるつもりでもいた…」


「じゃあ、別に、とやかくいわないでよ、てか、連絡するだけじゃんか」


スマホを取り返そうと体を起こそうとするが体にうまく力が入らず少し浮いた頭がすぐに枕に引き寄せられた。そんな私を置いて、姉は語り続ける。


「でもね、あんなことが起きた後なんだ。シビヤになるよ…たとえ、それが同性であったとしても…つーちゃんだったとしても……それに、私は、昨日勝手にデートに行ったことにも対しても、怒ってる。可愛い妹が体調壊してるんだ」


「こ、これは私が悪いだけだ!!」


「…確かに、小さい頃から、体が弱い子だったさ…だから、私が、守るし、幸せにする。もう、私も後悔したくない……妹ちゃんに辛い思いをしてほしくないんだ……させたくないんだ…だから、妹ちゃんには悪いけど、連絡することも、私は許可を出すことはできない」


「なんで…なんでなんだ!!…よ…。」


私は怒鳴りつけようとしたが姉の苦痛に耐える、歪んだ顔が目に入ってしまった。その時、なんでなんだよっと言ってしまった私の愚かさに気づいた。アイツとの事でひどく、傷ついたのは、私だけではなかったことを。この姉が、犯してしまったと、自分の事をひどく自責していたことを。姉は、悪くないのに。


「もう、私は妹ちゃんを傷つけたくないんだ……だから、」


「…姉さんは、何も悪くないんじゃないか…」


「…妹ちゃんは優しいから、そう言ってくれてるんだよ…………でも、たとえ、そうだったとしても、無理なんだ…私はこうしないと壊れてしまいそうになる…」


どんどん、弱る姉をただ単に眺めることしかできなかった。本当に、アイツはいつまで私を、私の周りでさも汚していくんだよ……穂村も、普段は隠しているが、どこか、後ろめたさもずっと残ってるし…姉さんも気が抜けたらいつもこうだ…本当に最悪…、昨日の様な幸せが毎日続けばいいのに……………………あれ?、そういや、穂村のあの言葉を聞いてから、昨日はアイツの事が頭から消えていた。いつも、授業中や、家の中、それに、穂村との放課後デートのときでさへ、思い出してしまう時がある…………でも…昨日のデートは、穂村のおかげで上書きされたみたいに、消えてた。そうか、このまま、穂村と過ごすたびにアイツを消せていけるのかもしれない。私は少し、気持ちが楽になった気がした。いや、すごく綺麗な光が見えた気がした。

私は重い体を持ち上げて、ベットに腰かけた。そして、崩れている姉を見つめた。肩に手を置いた。


「姉さん…だったら、今日、私が風邪で休むこと穂村に伝えてきてよ」


私の、瞳には揺らがない絶対に折れない芯が宿った。


「そしたらさ、穂村の事、姉さんも信じれるようになるよ」


私みたいに。穂村のまばゆいあの感情を見るだけで、アイツの事なんか埃みたいにどっかに飛んでいく。だから、私は穂村を信じることにしてみた。


まぁ、私が惚れるんだ、姉さんも惚れかねないが今は良しとする。


「…妹ちゃんが言うなら会ってみるよ…久しぶりに……でも、何を考えているかわからないけど私の心はそう簡単に揺らがないよ……そもそも、私はつーちゃんには妹ちゃんをあげる気はなかったし」


「わかってる、でも私は、姉さん認めると思うよ、昔から、変わらないけど、穂村はもっと手ごわくなってるか」


私はクスリと笑う。そーいや、そうだった。昔から、穂村が私の近くに寄ってくると、何かと姉さんが邪魔してきてたんだったけか。


「私は穂村のこと信じてるから」


「あぁ、そう?だから?可愛い妹を守る姉は最強なんだよ?」


姉も笑う。さっきまでの、重い空気が少し和らいだ。いや、姉自信、穂村と言う明確な敵のおかげで、いつもの調子を取り戻したのだろう。


「じゃあ、行ってくるね、あ、別れることになったら、お姉ちゃんが養ってあげる」


「うっせ」


姉は、ハートマークを出して私の部屋から去って行った。スマホも。まぁいいけど。

でも、穂村の事を信じる…………ん?いや、ちょっとまて、恋は盲目は言うけれども、あいつ客観的に見たらやばくねーか?盗撮してたり、なんか変態ぽくなったり次第にはヤンデレ属性(私もだけど)。あー無理かもしれん。でも、頑張ってくれよ……穂村………………あぁ、ダメだ。今は考えるだけ無駄だ。あと、熱でもう頭がまわらん。うん。もう寝よう。


そして、私はポフッと布団に身を任せ倒れ込むのであった。

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