第2話「日々、春は訪れる」
「ねぇ、日蔭」
「なに?穂村」
今日も今日とて二人で登校する朝がやって来た。と言っても一味違う。周りを見渡せば桜が満開に広がる季節。出会いの季節、春がやってきました。
「出会いの季節だよ~」
「そーだねー」
「でも、よかったね、日蔭、二年生に進級できて」
「…………理不尽」
「えー、これは日蔭が悪いじゃん」
と、あははは!と笑って私の背中を叩く。…マジで、なんなのこいつ?はぁ?わけわかんない。どーして、あんなにめんどくさい人が頭がいいんだよ(学年1位)。
いや、ここで、穂村について整理しておかないと、私のアイデンティティーが崩壊しかねない…いや、そもそもこいつに対してそんなのないか…え、私みじめすぎねーか?いやいやいや!!!考えるな!!!!!!
穂村16歳。県内トップの高校に通う高校二年生(私も通ってる)。てか、なんで私入れたんだよ。
「どうして、日蔭が入れたのか不思議だよねー」
「うっせ、確かに私は学年ほぼ最下位だけどさ」
いいや、そんなことはどーでもいい。続きだ。続き。
穂村の父親は、穂村財閥の会長で、穂村はそのご令嬢と言うことだそだ。最近では、その頭の良さが父親の目に留まり、財閥の傘下である会社の一つに穂村自身が社長として経営しているらしい。まじでなんだよ。高校生が、やるのはバイトか、実家の店の手伝い。まぁ、穂村の場合も実家ではあるが規模が違う。
「ホント、そーだよね~私、高校生だよ?文武両道の域こえてるよね、日蔭代わらない?」
「喧嘩売ってるのか?買ってやろうか!?」
そんなこと出来るなら、学年最下位とか取らんわ……いやいやいや、無視だ無視。
それで母親は、なんと、今でも、大人気な大女優。まぁ、その血のおかけで、穂村の容姿は才色兼備という字を当てても構わないような整いようだ。
「そんな~照れるよ~、それに日蔭も、十分に可愛いよ?……あ、でも、かーさんに‘‘今でも‘‘は厳禁だよ?ぴちぴちな女子高校生とお肌年齢対決して、はしゃぐ人だから、年齢を感じさせるワードは厳禁」
「あ、そうなの?これからは気をつける」
「うん」
と、私の足が止まった。
「?どーした、日蔭」
少し先まで歩いていた穂村がこちらに振り返った。
「え、ちょっと待って」
「え、待ってるけど?」
うん。確かに止まってはいるよ。うん。
「いや、そーいうことじゃねぇーよ!!」
穂村は目を丸くして、頭をかしげる。その姿を可愛いと思ってしまったのはここだけの秘密にしておいて。
「なに、さっきから、私の心の会話に乱入できてるんだよ!!」
「え、今更?」
「うん、確かに今更だけど、今更!!!」
穂村は、両手で口元を押さえて笑いをこらえている。
「え、いやだって、日蔭、口に出てたし」
「まじか!私か!てっきり、穂村が、実は私心読めるんだ。とか、愛ゆえにお前のこと顔見ただけでわかるよ。みたいなものだと思っていた!!!!こんな、恥ずかしいことしか考えられなくなってしまっている…クッ私を殺せ!」
「はははは!さすがに日蔭、中二すぎ、お腹割れそう!それにリアルのくっ殺初めてみた!、ちょ、やめてよ!お腹割れる!!ははは!」
穂村はお腹を抱え涙目になりながら笑う。
「……あーやばい、穂村の事嫌いになりそう」
失言だった。もう言わずもがなだよな。だいたい2,3時間かな?そんぐらいかかった。てか、恋人をなだめるために学校サボるとか、初めてしたわ。
今は、どこぞの土手で私は三角座りしている。そして穂村は、私の腕に絡みついて川を眺めていた。
「グスン」
「ごめんって」
「…私は絶対穂村を離さないから…」
「あ、愛が重い」
しばらく無言が続く。
「ねぇ、日蔭」
「何?穂村」
「日蔭がさ、好きになった女の子って私が初めてだよね」
「まぁ、そーだね、同性では初めては穂村だね」
「つまり、日蔭はまだ、同性が好きになるのは初めて、私しか例がないってことになる」
「ま、まぁそうだね」
え、なに、なんか怖いんだけど。
「つまり、私以外の人にビビッと来ていしまうかもしれない人と出会うかもしれない…正直、私は君が弱っていたとこに漬け込んだ節があるから」
「……まぁそうだね。そんな昔のこと忘れたけど」
まぁ、そんなに昔の話じゃあないけど……でも…あ、なんだ、そーいうことか。どこか腑に落ちた。
「…私、日蔭のこと離したくない、離されたくない」
「………」
私は息を吸い込んで優しく吐いた。
「大丈夫だよ、私も穂村のこと離すつもりないし離させるつもりもない。だって、いるかもわからい、もしもの運命の人に妬く可愛い恋人を手放すつもりなんてない。それに、はなから同性好きなら、あんな奴と付き合ったりなっかしてないし、これから先も、穂村以外を好きにならない。だって、私は、穂村を好きになったから、女とか男ろか、じゃなく、私に手を差し伸べてくれたのが、私の支えになってくれたのが穂村だから…私は穂村が好きになったから恋人になった、これから先も穂村以外を私は見ない。だから、穂村、私も穂村の事離さないから……そりに、穂村が私の手を取ってくれたあの日、私は穂村にビビッと感じたよ」
「………日蔭、愛が重すぎー」
「お互い様だ」
桜たちのせせらぎが心地よく耳にとどまり、春風が心を温かくしてくれる。
めんどくさいし、重いし…愛なんてろくでもないものかもしれないけど、穂村と思い合う、この優しくて重い愛は今の私の生きがいだ。そして、生きる理由なのかもしれない。
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