日々とあう

カナタハジメ

第1話「日々、私は思う」

「ねぇ、穂村ほむら


夕日が写真映えしそうな帰り道、恋人の穂村に疑問をぶつけてみることにした。


「?」


「いやーね、私たちってさ、まぁ、同性カップルって奴じゃないですか」


そう、いったとたん穂村は歩みを止めうつむいた。


「え、どーした?」


「…………」


謎に無言を貫く。だが、ぽたぽたと雨上がりの様に涙を流していた。


「え!?な、な、なんで泣いてるのさ!!」


私は尚早に駆られて穂村の両肩を握り顔を覗き込んだ。


「…私、日蔭ひかげとまだ、恋人でいたいよ……別れたくないよ~」


そういって号泣した。この時、私は思ったのだ。わー、めんどくさー、と。男とだろうが女とだろうが関係ないんだなと。惚れたもんまけなんだなと。

私はそのまま勘違いであることを説明した。2時間もかけて。2時間は太陽が沈み切るには十分な時間だった。おい、綺麗な夕日どこいった、と。


まぁなんやかんやあり、現在ファミレスに2人で来店した。そして、穂村の前には、パスタにピザ、いちごがたっぷり乗ったパフェに、ジュースが置かれていた。対して私の前には水が入ったコップのみ。


「いやーまさか、日蔭から別れ話されるとは~焦った焦った」


「誤解が解けて良かったね、穂村お嬢様」


私は、納得がいかなかった。なぜ、謎の深読みでギャン泣きした恋人の方が、高めの料理を注文して、功労者である私は水だけなんだ。理不尽すぎる。社会が、世の中が!!!!!経済落差め、糞くらえ!!!

なんて思っていたら、まぁ能天気なお嬢様が話しかけてきた。


「そーいえばさー、さっき何聞こうとしたの?」


「え、あー、別にたいしたことじゃないからいいよ」


「えーいいよ、気になるじゃん~」


…ごねんなよ、おめぇのせいでこちとら疲れてんだよ…って、おもってもしゃーないか。

だから、さっきの続きを私は語り始める。


「…いや、私たちって同性カップルじゃん」


「うん、まぁそうだね」


「そんでさ、お前のこと紹介するときさ、彼氏っていえばいいのか、彼女っていえばいいのかって疑問におもってさ」


「……………ふっ、それは、百合やBLにおける攻めか受けか問題かい?」


「え、違うけど」


「ふふふふ、日蔭君それは、不毛な争いしか生まないのだよ?」


「…聞いてないだろ、人の話」


「わたしはねぇ、断然、日蔭は受けな気がするんだよな~、普段、クールぶって、つっこみとかしてはりますけど、ギャップ狙いかなと毎日思ってる……………いや、まてよ、私は日蔭にあんなこと、そんなことされたい!!!私の願望が、君を攻めにする……だからと言って攻めは譲りたくない……確かに難題だ!」


べしっと、脳天に一発と。


「バカか!お前は、なに一人で恥ずかしいこと言ってんだよ、店員さんにわらわれてたじゃねぇーか!!!」


「……痛いよ~…なんですか、日蔭さん、SMプレイをご所望ですか?いや~、私たちまだ、大人の階段すら登れてないのに…いや~日蔭さんのエッチ」


バン!!っとさっきより強めの一撃を食らわす。


「いっぺん、死ぬか?」


追い打ちをかけるように、冷たい視線を送る。


「…私、そんな、Мでもマゾでも、ないのに……でも日蔭が望むなら…グへへへ」


よだれを、垂らして言う穂村にも一発かましてやろうと手を振り下ろすと、パシッと手を握られた。


「お、おい、防ぐなよ」


「そんなの、考えなくていいよ」


穂村はそういって私の手を握っり、そのまま手を自分のおでこにくっつけた。


「どっちが、彼氏とか彼女とか、そんな、どーでもいいことなんて考えなくていい、ただ単に、私たちは恋人。それだけでいいじゃん。お互いがお互いの事を愛しあってる。だけじゃん。だから、紹介するときは、私の最愛の人だっていえばいい」


「なに、カッコつけてんだ」


「…日蔭はまだ、何か言葉にできない何かを抱えたままなんでしょ?」


「え?」


私はかなりまぬけな返事をした。


「まぁ、ご時世的に、同性愛者の迫害の量は減ったけど、やっぱりまだ、受け入れられてはいない感じはあるもんね」


どこか、悲しそうな顔を浮かべて穂村は語り続ける。


「多分、日蔭は、もともと、同性愛なんて感じてなかった人だったとおもんだよ、でも、私にとっては嬉しいことに、君は私を愛してくれた…まぁ状況が状況だったと思うけどさ…」


「……だから、私は、同性カップルに抵抗があるってこと?」


「私から、見たらそんな感じはする」


2人の間に、重い空気が充満する。確かにそうかもしれない。私はどこかで思ってしまっている。百合だのBLだのが綺麗に丸く収まるのは創作の世界だけだと。現実では、うたわれてはいるのの、まだこの世界じゃ非現実なんだと。


「なんか、ごめん」


「うんうん、いいよ、全然私は、日蔭のこと大好きだし、愛している…だから、私は君が心の底から、私を愛してくれるまで、君の隣で待ってるから」


「……、そっか、ありがと、でも、ちゃんと穂村のこと大好きだよ」


「ズキュン!」


「うっせ」


私たちは笑いあった。そこには何の壁もない、ただ単に、お互いのことを愛し合っている二人の幸せな空気しかなかった。


…まぁ、私もめんどくせーな……だから…許せよ、穂村、惚れられた弱みだと思って。

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