第12話 メイドと先触れ

結局、僕らは書庫で抱き合っていた。

「あはは、ごめんね。お兄ちゃん」

「気にするな」

僕は、リナの頭を撫でる。

やっと、涙は止まったようだ。

「お兄ちゃんはお兄ちゃんだね」

「なんだそれは、まあリナも璃奈だな」

二人で笑い合う。

きっと、僕らの在り方は魂に刻まれていたんだと思った。

「さてと、シンとリナに戻ろうか」

「はい、お兄様・・・表面上はでいいよね?」

「もちろん、たぶん僕も戻ってしまってるから無理だ」

「えへへ、ありがとう。お兄様」

僕らは、共にあり続けた兄妹なんだと思った。

僕らは、手を繋いで歩いていく。

行先は、父の執務室だ。

執務室は、書庫からはそこまで遠くはない。

だが、執務中かもしれないので誰かに先触れ頼んだ方がいいかもしれない。

「先触れが必要だよな」

「そうですね、では一度部屋へ戻りましょう」

僕らは、踵を返して自室へと向かった。

3歳になって分かったことだが、書庫から自室はかなり近い。

赤ん坊の時は、大冒険レベルだったのに。

目線の高さや運動量の差だろう。

やがて、僕らの自室・・・二人部屋なのだ。

こんな広い屋敷なのになぜ二人部屋か、それは僕らが常に二人で行動しているから。

まあ、離れようとしないからが理由。

あとは、まだ3歳児だからというのがある。

自室に戻ると、栗毛でショートヘアのメイドが掃除をしていた。

彼女は、僕らの専属のメイドをしている少女カルアである。

「シンさま、リナお嬢様。書庫でのご用はもうお済なのですか?」

「うん、そうなんだよね。

カルア、今日も掃除ありがとう」

「過分なお言葉ありがとうございます」

ただのお礼も、過分かぁ。

文化の違いって難しい。

リナが、繋いだ手に少し力を籠める。

「おっと、そうだった。カルア。

済まないんだけど、父上に面会の先触れをお願いできないかな」

「はい、畏まりました。

お二人で面会希望とのことでよろしいですか?」

「うん、よろしく」

「畏まりました。失礼いたします」

そう言うとカルアは、部屋を出て行った。

はぁっと溜息を吐く。

「お疲れ様です、お兄様」

「あはは、ありがとう。リサ。

こういうことにも慣れていかないとな」

「ええ、そうですね。私も、そばで支えますから。安心してください」

「それは、百人力だ」

僕らは、緊張をほぐすように話をしていく。

さて、どれほどで面会が叶うだろうか。

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