【第1章】緋灯の双神童

第11話 『兄』『妹』を再認識する

生まれてから3年の月日が流れた。

僕らは、この2年書庫に入り浸りになっていた。

結局、書庫にある本は二人とも読み切ってしまった。

「お兄様」

「なんだい、リナ」

「明日からどうしましょう」

そう、読み終わってしまったからやることがなくなってしまった。

リナとは、もう普通に話ができるようになっていた。

というか、貴族でも3歳児がここまで普通に話をしているのはおかしい気はする。

僕らには、家庭教師という物はついていない。

たぶん、教師役ができる人はいないだろう。

「じゃあ、父上に相談してみよう」

「はい、そう致しましょう」

僕らは、いろんな魔法を使えるようになった。

本来だと、10歳になってから学園に通って覚えるのが普通らしい。

そういわれても書庫には魔導書もあったんだから仕方ない。

さて、僕らがどうしてここまで読み書きができたか。

それには、理由があった。

生まれた時、僕らの耳にはそれぞれカフスが付けられていた。

父が、僕らが生まれた日に遺跡から持ち帰った物らしくこれが関与していたらしい。

今では、鑑定魔法でこれがどのような物かわかる。

『知識の環:知識を高める効果がある。

(ただし、転生者には言語理解・スキル習得上昇の効果あり)』と書かれている。

「ねえ、リナ」

「如何されましたか?お兄様」

僕は、躊躇った。

でも、聞かずにはいられなかった。

「君は、井川 璃奈かい?」

リナは、目を見開いてそして嘆息をする。

「いまさらですか、兄さん」

リナが、笑みを浮かべていた。

「最初に見た時からそうだとは思ってた。

でも、怖かったんだ。違うって言われるのが」

「あはは、私もです。井川 新太郎ではないと言われたらと思って言い出せませんでした。

ごめんなさい、兄さん。言い出せなくて」

「いや、いいさ。

今世でも、妹になってくれてありがとう」

リナが、涙を流している。

僕は、彼女を抱きしめる。

「ずっと、リナの事が好きだったんだ。

前世でも、僕は異性としてリナが好きだったんだ」

「えへへ、兄さんもだったんですね。

前世では、無理でしたけど今世なら私は兄さんとずっと一緒にいられます」

そうこの世界は近親婚・同族婚が許されている。

ただし、近親婚に関しては正妻にはなれない。

ちなみに、僕らの両親は兄妹だったそうだ。

だから、父には僕らの母シアリーゼ以外に妻がいる。

「ああ、ずっと一緒だ。

今世では、僕が守るから」

「いいえ、守られてばかりいられません。

支え合っていきましょう。お兄様」

僕らは、お互いを再認識した。

この転生した世界で僕らは『愛』だけを持ち込んだのだった。

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