7冊目 『したがるオスと嫌がるメスの生物学』

『したがるオスと嫌がるメスの生物学 昆虫学者が明かす「愛」の限界』

宮竹 貴久 著 集英社新書


 2023/7/10読了


 ちょっと最近、昆虫の性について調べていまして。

 もっている虫の本の参考文献を頼りに、購入した本です。


 まず、タイトルが秀逸ですよね。興味をそそられます。


 内容に関しては、著者が今までおこなってきた研究内容の紹介についての色合いが濃く、個人的にほしかった情報はあまり載っていませんでした。けれども、面白かったので、全部読めましたね。


 この本のテーマは、「性的対立」。

 生物は、より多くの遺伝子を残すという目的があるのですが、一方が有利になる性質が、実はもう一方にとっては不利になるという現象のことを指すそうです。


 例えば、クワガタのオスはあごを発達させて、ライバルとの縄張り争いに勝とうとします。あごの大きなオスのほうが、一般的に言えば、縄張りを占領し、メスとたくさん交尾できるわけです。なので、どんどんとあごの大きなオスが進化していくはずです。


 ですが、メスにとって、この形質を考えるとどうでしょうか。メスに大きなあごは必要ありません。それよりも、卵巣を発達させて卵を多く残したいために、腹部の大きさが重要になってきます。しかし、大きなあごのオスと交尾をしたメスの娘は、頭部のほうが発達してしまうそうです。


 あごの大きさは、オスにとっては有利ですが、メスにとっては(特に娘を産む際には)、不利にはたらいてしまいます。


 そのためメスは、あごの大きなオスと交尾をした場合はオスをたくさん産み、あごの小さなオスと交尾をした場合はメスをたくさん産むといった、産み分けまでしているそうです。


(ちなみに、この実験は、実際はクワガタではなく、近縁のオオツノコクヌスモドキという虫でおこなわれたそうです。)


 このように、一方の性(特にオス)にとって有利な性質が、もう一方(特にメス)にとっては不利にはたらく事例がたくさん紹介されていました。


 そして大半は著者の研究でおこなってきたことだったので、「昆虫学の研究ってこんなことするんだ」と丁寧かつ地道な研究の数々に、脱帽しました。


 ちょっと難しい内容もありましたが、昆虫の奥深さや、研究の大切さがわかる、読み応えある一冊でした。


 今回も、勉強になる読書体験でした。

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