第8話 ペンは剣よりも(3月27日)
初めてものを書いたときの記憶は遠い昔のものになってしまったが、それでも、独特の緊張感は今でも昨日のように思い出せる。
特に、下手な文章を他の人に見られるという不安は、恥ずかしさの裏返しであり、どこかに隠してしまいたいという気持ちしか湧かない。
未だに書いている途中のものを見られるのは気恥ずかしいが、毎日のように投稿している今となっては昔日の観がある。
何十回とこなしてきたことを今更恥ずかしがったところで切ないだけなのだが、二年ほど前に初めて料理動画を挙げた時には赤面していたのだから我ながら驚きだ。
こちらは恥ずかしさこそ無くなったものの、投稿する前の不安感は未だに強く、少し後に参加する企画の動画をどうするか自問自答が続く。
しかし、自分がこれよりも緊張するのは、誰かの初めての作品を読むときである。
高校時代の私はまだ全方位にぎらついていたため、自分の想いを何の消化もせずにそのまま伝えていた。
いや、それよりも余程手厳しかったのではないか。
批評というよりも批判をする姿勢は、今ではもう影をひそめてしまったが、それは決して自分が体型以外も丸くなったからではなく、自分の思うところが変わったからに過ぎない。
今の私は裾野を広げて、可能な限り見ていただける世界を広げていく必要性を感じており、そのためには逃がしたくないというのが正直な思いである。
とはいえ、全く校正案を出さないのも無礼に当たるので、そこは簡単に申し上げるようにしている。
何とも現金な話であるが、先々を考えれば致し方ない。
とはいえ、今の私は偉そうに話ができる立場でもなく、そうした場をわきまえられるようになったというのも大きいだろう。
若さとは特権であると同時に無頓着であり、それで生かせてもらえなくなっていくのが現実だ。
そのような事を日々の晩酌に思いながら、昔を思い出すとやはり気恥ずかしくなってしまう。
気軽に他者を論える気楽さを見ると、時に鏡を見ているようで穴に入りたくなるが、これを高校時分の私が見ればどのように思うのだろうか。
くわばら、くわばら……。
【食日記】
昼:味噌ラーメン
夕:チキン南蛮、ささみチーズカツ、ウィスキーお湯割り3
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