第6話 袖振り合うと多傷の怨(3月24日)
車を走らせていると様々な運転と出会うが、これは見事というものを時に目にする。
巧みなハンドル捌きで手早く左右折する、見事にごぼう抜きして先頭に立つ、脇道を縫って最速を目指す……こうした運転を見ても起こるのは失笑しかない。
右に膨らんでの左折などはその最たるもので、本来の左折は脇の空間を詰めて巻き込みのないことを確かめてやるものだろうにと思ってしまう。
俗に言うドライビングテクニックなどよりも基本的な運転技能の方が大切ではなかろうか。
通勤途上に普通車同士であればすれ違える道がある。
こちらではこの車同士のすれ違いを離合と呼ぶが、その解説に最適な道と私などは思う。
これを止まらずにこなしきれればよいのだが、現実には中々うまくいかぬ。
自転車や歩行者があれば待たねばならず、対向車の動きに合わせて止まる必要も多い。
少し大きめの車などは道幅の広くなるところで待ち、そのまま対向車とすれ違うまで停車することも。
確かに車を傷つけぬためには必要なことなのであろうが、果たしてこれは良い運転と言えるのだろうか。
早々に答えを言ってしまえば、ひとつ向こうの大通りを使えばよい。
その道以外に使えぬという場所であればまだしも、少しの迂回で済むのであれば、無理をして通る必要性もないのだ。
それこそ自損の心配も減り、快適に走れるのだから、自分の運転技能に合わせて走るのが自然であろう。
私も慣れぬ細道は使わぬようにしているが、何故か離合できぬ者ほど細い道を好むようだ。
経路設定という言葉がある。
自分がどのように走るかを決めることであるが、これもまた一つの技能であるように最近は思えてきた。
私は可能な限り単純な道を選ぶようにしているが、それを自車の特性や天候、混雑具合から打算し行くのは他の技能に比べて磨きやすい。
右折を減らすことも一つであり、大通りを跨ぐ回数を減らすのも工夫になる。
しかしこれを、安全な運転のために行なっているドライバーは意外に少ない。
私もまだまだ甘い。
それというのも、安全な経路を取ろうとするとどうしても時間と距離が伸びてしまい、そこにロスが生じるような思いが生じてしまうのだ。
そのため、これを鍛えるには心の充足が必要であり、大切な技能でありながら身につけるのは困難を極める。
そのようなことを思いながら、停車した前の車のステッカーを眺める。
ドライブレコーダーをつけていますという表示が増えたなというため息は、果たして写っているのだろうかと少し失笑した朝であった。
【食日記】
朝:ポークフランク
夕:バーベキューポーク、けんキャベツ、ねこまんま、ウィスキーお湯割り3
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