第28話 来訪、唇ぷるんと美人な女の子
『選べる球技
・ドッチボール
・テニス
・ソフトボール
・アルティメット
・バスケットボール』
「私は──」
「先生!」
私が
そして、みんなの視線が一気に彼に集まったのが私にも感じ取れた。
「なんだ? と言いたいところだが、その前に一つ。発言をするまえにしなきゃいけないことを忘れていたぞー。それはなんだと思う」
先生がその男の子に向かってそう言うと、彼は無言になってしまう。
「……」
その男の子は昨日も
「うーんと、なんですかね」
数秒の間彼は無言でいたけれど、結局その答えにはたどり着けなかったらしい。
「……手を挙げること、だ」
先生が少々呆れながら言うと、彼はすぐに声を荒らげる。
「あ! そうだ! そうだよ! すいません、言われればめっちゃわかりましたー!」
「……そうかー。なら、次から気をつけろよー」
「おっけーっす!」
先生が彼の言葉に続いて言葉を発する。
「それで、私に質問かー?」
「あ、はい。……球技がいくつもあるってことは、どういうことなんですか?」
それは私も、そしてクラスのみんなも気になっていたことだと思う。
密かに私は、よく訊いてくれた! と心の中で叫んでいた。
「そうだなー」
先生がそこで一度言葉を止めた。けれど、みんなの耳は先生に傾き続けている。
「まあ、あれだー。普通にこの中の球技は全てやることが確定している。だから、その中でも、自分がやりたい競技を一つ選んでくれ。行う球技はいくつもあるが、一人につき参加することのできる競技は一つって決まってるからなー」
そう先生が言うと、先ほどの男の子がもう一度口を開く。
「五個もあるのに1つしか選べないんですか?」
「そうだ」
先生のその言葉が述べられたのとほぼ同時に、教室内のざわつき具合が一気に加速する。
「まあ、話し合いたいよなー。じゃあ、遥さん? がさっき私の質問の答えを当ててくれたから、五分だけ君たちに時間をくれてあげようー」
そして、教室内のざわつきがひときわ大きくなった。
※※
「なんでサッカーがねえんだ─────!」
「あんまりサッカー、人気がなかったんじゃない?」
「なんでだよ─────────!」
「どうしたの、沙也加。そんなに大きな声で叫んで……」
すると、沙也加が突然、私の頬に顔をスリスリと擦りつけてくる。
「
「ちょっ! くすぐったいからやめてってばー」
沙也加が不思議そうな表情をする。
「今聞いたぞ?」
「だって、今言ったもん!」
ピーンポーン!
家のインターホンが鳴り、私と沙也加はその音の聴こえたほうにそれぞれ顔を向ける。
私がテーブルに置いてあったスマホで時間をちらっと確認すると、約束の時間までにはまだ一時間ぐらいはあった。
私が伝える時間を間違えたかな、と思いながらも、その旨をすぐ隣にいる沙也加に伝えることにする。
「ちょっと私、行ってくるね」
「あたしも行くぞ〜」
私は心の中で、もうしょうがないなー、と思いながらもそれを口に出すことはせずに後ろからついてくる足音に時々耳を傾けて玄関に向かうこと約一分。
上下一つずつあるドアの鍵を順番に右に回し、それぞれの鍵を開ける。
「誰だ、誰だ」と私のすぐ後ろで騒いでいる沙也加を背に、玄関のドアを開けた。
その先に立っていたのは、見るからに高そうなドレスを見事に着こなしている、私と同い年のとっても美人な女の子だった。
艶やかな唇が彼女の口の動きに合わせてぷるんと震える。
「一時間と三〇分ほどは経ったでしょうか。こんばんは、
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